276 ロンとランチ②
「はい。みんなによくして頂いています。昨夜はカレンとプルメリアとパジャマパーティーをしました」
話しながらダグラスのことが頭を過る。一夜明けてみれば、顔を合わせても気まずさは感じなかった。ジェーンがあいさつすると、ダグラスも返してくれた。きっともう少し時間を置けば、元に戻れる。
「楽しそうだね。ディノくんはどうかな。なにか困らせることはしてないといいんだけど」
「あ……えっと……」
ジェーンは言葉に詰まった。
ディノにはまたみっともないところを見られてしまった。それにデートから逃げるように帰ってきた時、動揺のあまり彼をウソつき呼ばわりしてしまったことを、まだ謝れていない。
その反応をどう受け取ったのか、ロンはにこりと微笑んだ。
「どうか、ディノくんと仲よくしてあげて欲しいんだ」
実はね、とつづけながらも、ロンは考えあぐねるように手を組み、しばし沈黙した。
「……僕とディノくんは、本当の親子ではないんだ」
「えっ」
「ディノくんの両親は、彼が幼い時に他界してしまってね。縁があって僕が引き取ることになった。僕らには本当の親子にも負けない絆があると自負しているけれど……。時々、あの子にこびりついた寂しさを拭いきれていない気がしてならないんだ」
ジェーンはにわかに周りの物音や気配が気になった。大事な話をこんな席で打ち明けたロンに驚く。そして、自分なんかが聞いてしまってよかったのかわからず、目の行き場に困った。
「それは、みんな知っていることですか……? ルームメイトたちや、園芸部のブレイド部長も……」
「いや、知らないよ。話したのはきみがはじめてだ」
ひざに置いた手をジェーンはぎゅっと握った。指先は緊張で熱が逃げ出している。
「どうして私に、話してくれたんですか……?」
「ディノくんはきみのこと気に入ってるみたいだからね」
とんきょうな声が口から飛び出した。その拍子にイスからずり落ちそうになり、とっさに手をついた振動でテーブルのコップから水がこぼれる。
「僕もジェーンくんは信頼の置ける人だと思ってる。なによりうれしいんだ。ディノくんにそんな相手ができてね」
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