195 炎症した心③
それに、ダグラスとルーク、ディノの視線が痛かった。彼らはもうジェーンが解雇通達されたことを知っているのだろうか。知っていて、憐れんでいる?
たとえ今知らなくても、近いうち必ず知られることだ。
「ごめんなさい。もうお腹いっぱいです」
結局ジェーンは、ふた口しかスープを飲めなかった。それでもダグラスは、そっとトレイを下げながらやさしい言葉をかけてくれる。
「ううん、いいよ。少しでも食べられてよかった。プルメリアも少し食べれたんだ。じきによくなるよ」
しかしそれは静かに、奥深くジェーンの胸に突き刺さった。
なあんだ。私は二番目なのか。
冷めた自分の声が聞こえてハッとする。どんどん冷えていく手で戒めるように胸元を握り締めた。
順番なんて関係ない。彼は心配して来てくれたんだから。それだけで十分のはずだ。彼の中で私は出会って間もない友だちだもの。
それに比べてプルメリアは、何年も前から後輩で、恋人役で――。
今さら追いかけても届かないほど前に彼女はいる。振り返った彼がまっ先に目に映すのは、私じゃない。目覚める前は私だけを見てくれたあの眼差しで、あの子を見つめている!
「ジェーン?」
「……あの、眠くなってきたので休んでもいいですか」
平静を装った声でウソをついた。ダグラスはすんなりうなずいて、下がっていく。そう仕向けたのは自分なのに、あっさりした彼の態度に苛立ちを覚えた。
どうかしている。これも全部、風邪とアナベラのせいだ。
退室するルームメイトたちをろくに見送らず、ジェーンは横になりベッドに深く潜り込もうとした。
「ディノ? どうしたんスか」
そこへルークの不思議そうな声が聞こえた。見るとディノだけが腕を組んで一歩も動いていない。
眉をひそめるジェーンを見つめたまま、彼は淡々と言った。
「先に行ってろ。俺はジェーンと話がある」
「はあ? なに考えてるんスかあんた。今はジェーンちゃんを休ませてあげなきゃいけない時なんスよ!」
「ディノ、あとじゃダメなのか」
ダグラスの問いに「ああ」と答えるひと時も、ディノはジェーンから視線を逸らさない。頑なな様子にダグラスとルークは顔を見合わせて、こそこそと相談する。
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