274 パジャマパーティー④
「私もジェーンの気持ちを尊重するわ。だけど勘違いしないで。今のジェーンがダグに相応しくないなんて、少しも思わない」
「カレン……。プルメリア……。ありがとうございます。今までプルメリアがそうしてくれたように、私もあなたの恋を見守りますね」
自分だってぼろぼろとこぼれる涙が止まっていないのに、ジェーンは指先でやさしくプルメリアの涙を拭ってくれた。ぼやけた視界がはっきりとして、小さく微笑んでいるジェーンが見える。
ああ、この人は本当に強くて美しい人だ。好きな人のためなら、自分が傷つくことも恐れない。孤独を笑みで隠して、ひとりで歩いていこうとする。
お返しにプルメリアもジェーンの涙を拭いてあげる。大人しくされるがままのジェーンがなんだか小さい子どものようで、くすりと笑みがこぼれる。
「なんですか」
そう言った彼女の声も笑っていた。
「ジェーンがかわいくて」
「それはプルメリアもですよ」
先に涙を拭いてもらったのは自分だったか。そう気づくとおかしくなって、笑みが弾ける。ジェーンもつられるように笑ってくれて、カレンに見守られながらふたりでくすくす笑い合った。
彼女が恋敵で、私の友人であることを誇りに思う。
「ジェーンにとって一番いいのは、記憶を思い出すことなのよね。なにか思い出した?」
再びベッドに横たわって、カレンが尋ねた。夢の中でもいっしょがいいと願いを込めて、三人で手を繋ぎ合う。
「ダグと同じ学校に通っていたと思っていたのですが、卒業アルバムに私はいませんでした。写真の通りだとすると、なにも思い出せていないです」
それでダグラスとぎくしゃくしていたのかとプルメリアは合点がいった。
卒業アルバムに誤りがあるとは考えにくいが、ジェーンの思い込みで片づけきれないとも思う。
はじめてジェーンと会った日、彼女はパレードも周りの客も目に入らず、まっすぐダグラスに飛びついた。まるで何年も離れていた恋人と再会したかのようだった。
「私は、大切な記憶って消えないと思う。思い出せないだけで、どこかで呼ばれるのを眠って待ってるんじゃないかな。だからジェーンが感じてるもの、間違いだとは思わないよ」
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