300 お節介ルーク①

「あんたと家族になるなんてごめんだ。俺は認めない」

「ディノ!?」

「待ってよディノくん! そんな言い方しなくても……!」


 カレンとプルメリアから次々と非難の声が上がる。ジェーンは急激に凍えていく手をすり合わせながら、自分に言い聞かせた。

 ディノは本当はやさしい。草花が大好きで同僚から一目置かれていて、ウソを言ってからかうけれど、傷ついた心にはそっと寄り添ってくれる。

 だからこれもきっと本心じゃないんだ。そう願って、すがるように目を起こす。


「なにを言われようと、どう思われようと俺は反対だ。絶対にゆずらない」


 しかしそこには、ジェーンを冷たく見下ろすディノの姿があった。


「あ……」


 恐怖にも似た衝撃に囚われて声も出せないジェーンから、ディノはさして興味もなさそうに顔を背けてダイニングを出ていこうとする。その背を、慌てて立ち上がったカレンが引き止めようとした。


「い、いいんですカレン……!」


 ディノを行かせたのはけして、やさしさなんかじゃない。これ以上傷つくのも、自分のためにやさしくされるのも、辛かったからだ。


「ディノだって、戸惑いますよ、それは……。いきなり養子だなんて……受け入れられなくて当然です……。私ももう少し、ひとりで考えてみますね」


 手つかずの夕食を見ると心が痛んだが、ジェーンはルームメイトたちの視線から逃げるように自室へ向かった。




 * * *



「くそっ! ロンのやつ一体なに考えてやがる……!」


 イライラと髪を掻き乱しながら、ディノはシェアハウスの外にあるベンチに腰を下ろした。

 ジェーンと関係を持つよう強要してきたかと思えば、今度は養子縁組だ。義父の考えていることがまるでわからない。


「お。ラッキー。一発でビンゴっス」


 背後でガチャリと扉の開く音がしたと思ったら、ルークのまぬけな声が口ずさむように明るく響く。ディノは無言で立ち上がった。


「ちょお! 行かせないっスよ。はい、座って座って」


 後ろからがっつり肩を掴まれて、体重をかけられた。振り払うことも考えたが、その拍子に腕の傷を見られたらもっと厄介だ。深いため息で不満をあらわにしつつ、座ってやった。


「ほんと、めんどくさい人たちっスよねえ……」

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