360 Creation magic garden④

「アダム様、イヴ様。人の世は、残念ながら絶えました。かつて栄えた古代生物たちが滅んでいったように。そして世界は新しい時代を迎えたのです。それはダグラスやルーク、カレンやプルメリアたちの時代です。この世界において、私たち人間はもはや遺物。彼らこそが未来です」


 ふわりと風がジェーンの髪をなで、アダムが飛び立った。神鳥は滑るように宙を飛び、イヴの背中に舞い降りる。


「そうなんだ。そうなんだね。うん……。僕はきみがそう言うのなら、もう望まないよ。イヴはどう?」

「……ジュリーも同じ気持ちなのですか」

「ああ。争いはもういい。俺はともに生きたい。たとえ魔法の力を取り上げられたとしても構わない」


 歩み寄ってきたディノと微笑みを交わす。思いは同じ。そう心を込めて褐色の手を取る。確かな力強さで握り返された。

 神狼はまるで人のようにため息をつく。


「かわいいわたくしのジュリーの望みを、どうして叶えてあげられないことがありますか。アダム、わたくしも夢を見るのはやめます。残った最後の人間をともに愛でて慰めましょう」


 アダムは高くさえずって羽ばたき、ジェーンとディノを囲うように飛び回った。葉っぱの尾を揺らすイヴの表情は、かすかに笑っているように見える。

 神狼はハッと目を引くほど慈愛のこもった眼差しをしていた。その視線は一心にディノに向けられている。まとう空気は母親そのものだ。

 ジェーンがそう感じた通り、赤子だったディノはきっと惜しみない愛情に守られて育ってきたのだろう。

 今はもういない、両親と姉と兄を思い出して、ジェーンは少しだけうつむいた。


「ロナウド。あなたにはわたくしたちのために、大変苦労をかけましたね。これからは新しい時代で、あなたの道を歩んでいってください」


 ロンに向き直ったイヴがおだやかに終わりを告げる。心酔していた神からの言葉だ。意識統制のようで嫌っていたディノは複雑な表情を浮かべたが、これでロンも目を覚ます。

 ディノに寄り添ったジェーンはそう信じていた。


「なにを、仰るのですかイヴ様」


 ジェーンは目を見張った。ロンは放心したように手を投げ出し、どこか虚空を見つめている。あまりのことに、すぐには理解できなかっただけか。

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