319 消えたルームメイト⑤
しかしカレンのその言葉でジェーンは気づいてしまった。ロンが欲しがっているのはディノだけではない。ジェーンもだ。なにか目的のために利用したがっている。
ジェーンさえ決意すれば十分、交渉材料になる。
「ジェーンちゃん、俺もおすすめしないっスよ。はっきり言って今のあの人は、なにをするかわからないっス」
「いいえ。彼が用があるのは私です。だから養子の話を持ち出したり、昼食の席を設けたりしているんです。私が出向けば、ディノを解放してくれるかもしれません」
ルークの忠告に答えながら、ジェーンは園長室のある方角を見やる。
企みは全部、最初からだったのだろうか。記憶を失ったジェーンを保護したのも、シェアハウスに連れていってくれたことも、クリエイション・マジック・ガーデンに就職させてくれたことも。親切はすべて厚意ではなく計算だった?
そう考えるほうが、腑に落ちる自分がいる。
「ジェーン!」
突然、肩を掴まれてジェーンはビクリと向き直った。目の前に迫ったダグラスはしかし、自分でも驚いたような顔をしている。ジェーンと目が合ってすぐにダグラスは手を引いた。
「えっと、俺もいっしょに行くよ。ひとりは危ない」
「ありがとうございます、ダグ。でもロン園長はたぶん、ふたりきりじゃないとなにも話してくれないと思います。いざとなれば魔法で逃げますから、ここは私に任せてくれませんか」
そう言いながらジェーンはルームメイトたちの顔を見回した。みんな不安そうだ。だけどすぐにでも止めないのは、ジェーンと魔法の腕を信頼してくれているのかもしれない。そう思うと勇気が湧いてくる。
「私、シェアハウスで暮らせて、みんなといっしょに仕事ができてうれしいです。みんなを……家族のように思っています。だから私にできることは、なんでもしたいんです!」
思惑に巻き込まれた出会いだったとしても、シェアハウスでの日々は色
“ジェーン”が結んだ新しい絆を抱き締めても、“私”は寂しがったりしませんか?
「私だって家族だと思ってるし、親友だからね!」
「私にとっては恩人でもあるわ! ディノももちろん欠けたら困るのよ!」
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