320 消えたルームメイト⑥

「俺もジェーンちゃんとディノがいなきゃつまんないっスよ! 四人ぼっちなんてもう考えられないっス!」


 プルメリア、カレン、ルークが競うように口々に言う。そんな中ダグラスはひとり、戸惑ったような顔をしていた。彼はルークに背中を叩かれて、つんのめりながらためらいがちにジェーンを見る。


「俺……最初は混乱したけど、どんどんジェーンと過ごすことが当たり前になっていった。いっしょにいると安心するんだよ。田舎のばあちゃんみたいに」


 そう口走ったとたん、ダグラスはカレンとプルメリアにキッとにらまれた。ルークからは脇をひじでつつかれ、彼の眉はますます下がっていく。


「だからつまり、無茶しないで。ディノもジェーンも戻ってきてくれなきゃ、意味ないんだからな」


 うん。きっと“私”だって気に入るはず。こんなにあたたかい人たちだもの。


「はい。肝に命じておきます」


 くすりと笑ったジェーンは、カレンとプルメリアに絡め取られた腕を引かれ、連れ出されてしまった。田舎のおばあちゃんなんてあり得ない。もっと気の利いた言葉があるでしょ。と、ふたりはダグラスにご立腹だ。

 でもジェーンは少しだけうれしかった。胸の高鳴りよりも心地いい安堵は、ダグラスとジェーンが過ごした長い時間の存在証明のように感じられた。


「あれがダグ先輩の答えってことでいいんスか。まあもうジェーンちゃんはそう思ったでしょうけどね、確実に」

「……さっき強く、ジェーンをロン園長のところに行かせたくないって思ったんだ。そしたら、気づいたら肩掴んでた」

「はあ? それってじゃああんたの気持ちは――」

「なにかに突き動かされた感じだった。一瞬、誰かの声がして……。俺に似てたけど、俺じゃないような」

「もっとわかるように言ってくんないスか」

「……この気持ちはどこから来たんだろうって思ったんだよ。変なこと言うけど、俺のものじゃない気がするんだ」




 昼休み。ジェーンは周囲を警戒しながら、園長室の納屋のようになっている一階に近づいた。扉に手をつき、魔力で材質を探ってみる。


「……うん。これなら加工できそう」

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