255 衣装創り③

「ジェーン、どう?」


 すかさずでき映えを確認しにきたクリスに、ジェーンは素直に答える。


「もうちょっとチョコ感を出したいです。チョコのツヤっとした質感が出せるといいんですが」

「ツヤ……サテン? いや、サラサラし過ぎかな。チョコはマットな艶だから……レザー調とか? でも礼服にレザーは合わないか」

「それなら部分的に使うのはどうでしょう。たとえば」


 言いながらジェーンは空に線を描く。するとパンツの左右に一本ずつレザー調のラインが入った。


「同色にすれば悪目立ちしません。光が当たった時だけぬぺっと反射してくれます」

「いいね。マントもそうしよう。ショートマントを追加して……ここをレザー調に……」


 クリスは肩からもう一枚、レザー調のショートマントを創った。

 ジェーンはマネキンをくるくる回してみせる。マントがそれに合わせて踊り、生地の光沢がせつなひかえめに輝く。チョコの質感と見映えが上がっていた。


「ダンサーたちがこれ着て踊ってるとこ、早く見たくなってきたよ!」

「私もです! きっと喜んでくれますよね!」


 ジェーンとクリスは勢いづき、今度はふたりで二体のマネキンに向かう。次は女性ダンサーの衣装だ。

 デザイン案の横に走り書きされたメモを見て、ジェーンはにやりと笑う。これは得意分野だ。自信を持って腕を振り、魔力を練り上げる。


「スライムのパンプキンに綿雲のホイップを添えて」


 ひざ丈のプリン型スカートの上に、ホイップを盛りつけていく。トップスは黒のレースカットソーに、カボチャのランタンスリーブをぷくりと実らせる。

 ボトムは黒のタイツに、つたと大ぶりの葉っぱを片足に巻きつけた。

 最後に種の耳と黒くて長いしっぽをつければ、黒ネコパンプキンプリンのでき上がりだ。


「さすがジェーン。僕の想像通りのスカートだよ」

「クリスのスカートもすごいです! ぽんぽん弾みそうですね」


 横ではクリスがショコラドーナツを重ねてロングスカートを創っていた。上からかけられた紫のソースが、流れるままに滴り落ちている。腰からは二本の黒い尾羽が、床につくほど伸びていた。

 黒と紫のストライプが入ったトップスには、首周りと袖にふんだんにファーがあしらわれている。

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