287 ショーの反響②
「あれ出待ちなんですか!?」
最近やけにバス待ちの人多いな、と思っていたジェーンは驚いた。でも言われてみれば確かに、色紙らしきものを持っている人もいる。
「だ、だいじょうぶですか、ダグとルーク。サングラスとマスク創りますか!?」
「いや、平気だよ。ウィッグとか化粧してるから、今までバレたことない。ルークは着ぐるみだからバレる要素ないしなあ」
「はああ? 俺の歩き方の癖とかで気づく人いるかもしれないっスよ!?」
「ないない」
じゃれ合うダグラスとルークは、ジェーンよりも堂々と広場の真ん中を突っ切っていく。視線は感じたが、あまりにも出待ちを気にしないダグラスとルークに確信を持てるファンはいなかったようだ。
無事、路面電車の停留所まで着いて、ジェーンは安堵の息をこぼす。するとにわかに、笑みが込み上げてきた。
「ふふっ。ダグもルークもすごいですね。私、なんだか自分まで誇らしくなっちゃいます。こんなに素敵な方と友だちになれて、私は幸せ者です!」
ダグラスとルークは顔を見合わせたかと思いきや、ため息をついた。
「それマジで言ってんスか、ジェーンちゃん」
「次のショーは、ジェーンも出演させるべきだな」
うんうん、とうなずき合うふたりを、ジェーンはきょろきょろと見やる。なぜそこで自分が舞台に出演させられるのかさっぱりだ。
そんなジェーンをくすりと笑って、ダグラスは肩を軽く叩いた。
「新しい舞台に挑戦できたのはジェーンのお陰だろ」
「そうそう。だからすごいのはジェーンちゃんのほうっスよ!」
ルークからもお日様のように笑いかけられて、ジェーンの胸にぽかぽかと陽気が降り注ぐ。そのぬくもりを握り締めて、ジェーンは首を横に振る。
素晴らしい舞台を創れたのは、ニコライとラルフが技術や知識を教えてくれたから。クリスが力を貸してくれたから。そして、演劇部員とルームメイトたちがジェーンを認め、支えてくれたからだ。
「みんなが、できることを精一杯やったからです。みんなすごいです!」
脳裏にみんなの顔を思い浮かべたジェーンは、ふと寂しさを覚える。みんなの中にディノがいなかったからだ。家でも職場でも疲労と忙しさに追われ、まともに顔を合わせることすらなくなっていた。
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