54 シェアハウス全会議④
「劇団員はノリのいいところが玉にキズっスよねえ」
ぼやくルークの横でディノは欠伸をこぼす。その時、カレンのメガネがきらりと光った。
「ルーク、なにかいい案があるようね。話してちょうだい」
「げ。マジっスか」
カレン議長からの名指しにルークはぎょっと目を剥く。しかし目玉を泳がせたのも数秒のうちで、彼は不敵に笑い出した。
「僕の頭脳に頼らざるを得ないようだね!」
勢いよく席を立ったルークにはなにかが乗り移っていた。颯爽とテーブルを回り、短辺に手をついて身を乗り出す。かけてもいないメガネを上げる仕草をして、指をパチンと打ち鳴らした。
「簡単なロジカルだよ。昼食を買えないなら作ればいい。そう! みんなで順にみんなのお弁当を作ればいいんだ。名づけて『お弁当ローテーション作戦』! この作戦の成功率は僕の完璧な試算によると九九.九九九九――」
「あら、普通にいい案ね」
「みんなのお弁当食べれるって楽しそう!」
「ルーク、意外とやるじゃんお前」
「急に通常運転に戻るのやめてもらっていいっスか!? 俺が恥ずかしいでしょ!?」
カレン、プルメリア、ダグラスの賛同を得て、議題の方向性は急速に固まっていく。ひとり喚くルークをカレンは流れるように無視して、ディノへと目を移した。
「ディノもそれでいいかしら?」
「……弁当ってなんでもいいんだよな?」
「そうね。文句はなしにしましょう。嫌いなものが入っていても、おかずが少なくてもね。でもアメ玉一個とかはやめてよ」
カレンの忠告に笑いつつ、ダグラスが口を開く。
「五人でちょうど一週間。ひとり三、四回くらいだからどうにかなるだろ」
同意を求めるようにダグラスがルームメイトたちを見回すと、言い出しっぺのルークはもちろんディノもうなずいた。
ジェーンは心地よく締めつけられる胸を押さえ、グッと息を詰める。整備部事務所にいた時はいつでも心が重かった。背中をまるめて手足を縮込ませ、部屋の隅っこにしか自分の立ち位置を見つけられなかった。
けれど今は立ち上がることができる。みんなの注目を集めても怖くない。色とりどりの五対の瞳が、きっと微笑みかけてくれると確信が持てた。
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