96 いじわるディノ①
カレンに腕を取られて魅惑の空中通路――立体歩道というらしい――から離される。まずやって来たのは、赤い看板が目印の銀行だ。
迷わずひとつの機械まで進んだカレンに押し出され、ジェーンはどぎまぎする。
「カードと通帳は持ってきた?」
大きな紙袋からジェーンはすぐさまカードと通帳を取り出す。それらをカレンに言われた通り、青く点灯している差し込み口に入れた。
「あとは引き出しを選択して、いくら引き出すか金額と暗証番号を入力すれば完了よ。できそう?」
「はい。やってみます」
カレンはうなずいて背を向ける。するとそこにディノがやって来て、耳打ちしてきた。
「……そうなんですか?」
ジェーンは周りをうかがいながら声をひそめる。ディノは神妙な顔をしてうなずいた。
ちょっと恥ずかしいし、ディノが言うことだから怪しいけれど、こんなところでふざける彼でもないだろう。
引き出す金額と暗証番号を入力して、ジェーンは息を吸った。
「オープン・ザ・セサミー!」
完了のボタンをポチッと押す。しばしの機械音のあと、ガチャリと扉が開いてお金が出てきた。
「わあ! 本当に呪文で開くんですね!」
「あんたはなに吹き込んでるんスかディノオオオッ!」
後ろでルークの強烈なツッコミが
ルークがディノの背中を叩いていた。そのディノは腹を抱え、口に手をやってぷるぷる震えている。近くにいた年配の男性や子連れの女性が、ジェーンを見てくすくす笑っていた。
「もうっ、なにやってるの! ジェーン、これにお金入れて! 出るわよ」
またディノに一杯食わされたらしいと理解したところへ、カレンがてきぱきと封筒を用意し、外へ連れ出してくれた。
「信じられません! 外でもふざけるなんて!」
まだ笑いの波が引かないディノを置いて、ジェーンはカレンとルークの手を掴み先を急ぐ。筋肉なんかに目を奪われて、同行を断らなかった昨日の自分が腹立たしい。
と、闇雲に直進していたジェーンは、カレンに軌道修正された。視界に入ってきたのはなんとエスカレーターだ。
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