241 引率つきデート②

 ごめん、待った? ううん、私も来たところ。というデートのお約束なるものも絶叫でふいにしてしまった。

 と、唇を噛んでいるところへ腕を引かれる。顔を上げるとディノが身をかがめて耳打ちしてきた。


「悪かった。俺のことは空気と思ってくれていい。それに頃合いを見て帰るから」


 ジェーンは内心首をひねった。

 おもしろがってついてきたわけではないの? だとしたら、残念がるなんてますます悪いことをしてしまった。


「いえっ、そこまで気を遣って頂かなくてもいいですよ」

「いやまあ……とにかく楽しめよ。せっかくそんなかわいい格好してきたんだから」

「はあ。ありがとうございま――」


 ん? かわいい?

 ダグラスに呼ばれて正門に向かうディノをぽかんと見送る。デート服をかわいいと男性に褒めてもらうのは、お約束その二だ。


「なんでディノが言うんですか……!」


 小声で憤慨ふんがいするジェーンの胸に一抹の不安が過った。




 果たして、ジェーンのその不安は的中することとなった。

 〈ウォーターレイ〉の水場で危うく転びかけ、水かぶりフラグを回収しそうになったかと思えば、


「なんでこっち来るんだ! ダグラスのほう行けよ!」

「私も知りません! わあ!?」


雲のトランポリンで制御不能になり、ディノを押し倒す。

 城の貸し衣装屋では裾を踏んづけて掴まりどころが悪く、ダグラスに公衆の面前で下着を披露させかけた。

 源樹イヴの根っこレストランで食事をしていれば、粉チーズを取ろうとしてディノの手とお見合いする。森の迷路では、全部集めると景品がもらえるという女王の紋章――源樹の葉を象ったスペード型――を探しているうちにひとり迷子になり、半泣きになった。

 そして極めつけはアスレチックだ。滑車に括りつけたロープに掴まり滑空する遊具で、戻ってきたロープが暴れた。なんとか捕まえようとしたジェーンの手をすり抜け、ロープは隣にいたダグラスの横面を殴打したのだった。


「ダグ、すみません。ご迷惑ばかりかけてしまって……」

「いや、ジェーンのせいじゃないよ」

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