271 パジャマパーティー①

 ついこぼれた欲望をジェーンが拾ってくれた。それがうれしくて、プルメリアは跳び跳ねるように机に向かい、一冊の雑誌を掴んでローテーブルに広げる。

 軽くぶつかったカップをカレンが避けてくれた。


「これだよ! おそろコーデのネグリジェ女子会!」


 ジェーンに見せたのは、ファッション誌に載っていた今巷で人気の女子会特集記事だった。料理やゲームがメインのパーティーもある中、プルメリアの目を引いたのはお姫様のようなネグリジェを着た女性たちだ。

 これを見た時すぐに、カレンとジェーンが浮かんだ。なにせうちの女子ルームメイトは女優と、職場で密かに人気の小皇女だ。絶対にかわいい。


「これがネグリジェですか」

「そうだよ。かわいいでしょ」

「はい。花冠までがセットですか?」

「そうだね。ネコ耳カチューシャも捨てがたいけど、花冠もかわいい!」

「わかりました」


 えっ、とプルメリアとカレンの声が重なった。その時にはジェーンの両手がそれぞれふたりに向けられて、軽く振った瞬間パジャマが白いレースに変化する。

 首周りを大きなフリルがふわりと彩り、袖口も手の甲がすっぽり隠れるほどのフリルで包まれる。

 そして純白のレース生地はしなやかにひざまでを覆う。そこから白砂を滑る白波のように三枚のフリルが重なって広がり、プルメリアの足首をくすぐった。

 最後にサテンの白いリボンが、輪を描きながら胸元を飾る。


「わっ。花冠かわいい!」


 ふいに、頭を羽のようなものでなでられて手を伸ばすと、明るい若葉と白い花を編んで創った花冠が乗っていた。

 葉っぱも花も光を透き通して、ひかえめに輝いている。触ってみたら紙のような質感だった。


「エメラルドとパールで創ったストーンペーパーです」

「これ宝石なの!?」

「プルメリア。売れないわよ」


 ぴしゃりと釘を刺してきたカレンに、プルメリアは頬をふくらませる。創造魔法で創り出した宝石に価値はなく、売ったら逮捕されることくらい知っている。


「売りませんよー。せっかくジェーンが創ってくれたんだから!」


 それでもキラキラしたものを見ると心踊るのはなぜだろう。プルメリアは机の引き出しからカメラを取ってきた。

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