131 新遊具対決⑥

「はい。床にスプリングを入れています。トランポリンとして遊べますし、クッションとしてもゆっくりと過ごしてもらえるようにと創りました」


 ひざを使って軽く体を揺らしみたロンは、足を包むもにゅりとした感触にくふくふと笑う。


「これはいいね。家にこのクッションが欲しいくらいだよ。水遊びで疲れたお客さんも休めるね」


 我が意を得たりと笑みが弾けるジェーンの後ろで、アナベラは歯を食い縛る。

 この部屋は元より、小休憩場所として創った。水の部屋は歩く度に負荷がかかるし、なにより腰を下ろすことができない。だから次の部屋はホッと息をつける空間にした。

 アナベラの言う通り見映えはしないが、その分クッションにはこだわり抜いたのだ。誰もが腰を下ろして、埋もれてみたいと思えるように。


「ここに華美な装飾も演出もいらない。違うか? アナベラ」


 ただそこに在りつづける大木のように、静けさを湛えた目でブレイドはアナベラを見やる。しかし彼女はツンと鼻を上向けて、いつまでもゴロゴロしているジャスパーを叩きながらひとり先に行った。


「次はクリストファーさんです」

「任せてよ」


 ジェーンは小声でクリスと言葉を交わし、ひかえめに互いの手を叩き合う。

 そして着いた第三の部屋には、白樹皮の林がシンと佇む。照明は非常口を示すほのかな緑のランプだけで、ここはいっそう暗かった。


「なんなの。これだけ?」


 アナベラはさっさと出たそうに中央までずんずん歩いていく。そのぶしつけな態度を、クリスは鈴が転がるような笑みでかわした。


「ではアナベラ部長、そのベルツリーの鈴を鳴らしてみてください」

「は? ベルツリーってこの白い木? 鈴なんか……あ」


 なめらかな樹皮を持つ木を振り返り、アナベラは目を上に向ける。枝には透明な鈴の形をした実がいくつもついていた。硬く見えた枝はしかし、アナベラが触れるとよくしなる。

 小さな木の実がリンッと鳴った。

 すると部屋の様相が一変する。ただ黒いだけだと思っていた壁に、木々の影が青くぼんやりと浮かび上がり、それは天井まで伸びていて枝葉が額縁のように飾る。

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