130 新遊具対決⑤

 レイジはクリスに目を向けて、薄く笑う。ここまで事前に想定した通りの指摘だ。はっきりと受け答えるレイジの姿に、ロンも感心したようにうなずく。

 新遊具発表は順調に進んでいた。


「では次に行きましょう」


 そう言って一行をうながしたレイジに、ジェーンは緊張した。再び消毒プールを越えて、ふきんで足を拭き、風に背中を押されながら進んだ先には、ジェーン担当の部屋がある。

 その手前でジェーンはレイジに手招かれ、先頭に立った。期待とうろんな目を向けられながら、ふたつ目の部屋に入る。

 そこは白く、もこもこした床が伸びる広間になっていた。


「おっと……!」


 入った瞬間、よろけたロンの体をジェーンは支える。


「床はとてもやわらかいので気をつけてください」

「なんだー!? このもちつるすべふわ感! 足めっちゃ沈む! きもい! でも楽しい!」

「水気の多い泥みたいにサラリとしてなめらかだが、強く踏み込んだ時の弾力はなんだ……?」


 床をやたらなでまくるジャスパーの横で、ブレイドは片ひざをつきしげしげと観察している。

 ジェーンは緊張して渇いたのどをつばでうるおした。


「布の下にはスライムビーズが入っています。なでた時はサラサラしていますが、押すとぷるぷるした弾力があるんです。それをストレッチ生地でなめらかに包み、綿雲糸を織り交ぜてふんわりと仕上げました」


 言い終わったとたん、ジャスパーが四肢を投げ出して飛んだ。思いきり腹這いで落下するが、半ば埋もれた後頭部からは満足げなため息が聞こえる。


「ここはあなたが創ったのかしら? ジェエエエン」


 はい、と答えるとアナベラの目つきが変わった。


「そお。さっきと比べると地味でおもしろ味もないわね。ここはみんな通り過ぎるんじゃないかしら」

「お前の目は節穴か、アナベラ」

「なんですって?」


 にらみを利かせるアナベラに、ブレイドはあごをしゃくって見せる。そこにはスライムビーズクッションの上でぽんぽん跳ねるジャスパーの姿があった。


「やべー! これちょっとコツいるけどむちゃくちゃ弾む! トランポリンか!?」

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