133 未来を担うは①

 園芸部部長を気にしつつも、ロンは話を進めようと口を開く。しかしブレイドが待ったをかけた。


「レイジの案は確かによかった。だが、ガーデンに相応しいかと考えると疑問が残る。屋内施設ははじめてだからな。それに関して、ロン。お前の考えを聞きたい。お前の考えるガーデンのビジョンに、屋内施設は相応しいのか?」


 その問いが投げかけられたとたん、アナベラはにやりと笑みを浮かべた。ジェーンの胸に焦燥が募る。

 ガーデンと名のつく施設に、屋内遊具は適当か? その答えはレイジの中にも、ジェーンやクリスの中にもない。この新遊具はガーデンの在り方に一石を投じるものでもあった。

 ロンが口を開くまでには、しばし時間がかかった。


「僕はガーデンを遊園地のようにするつもりはないんだ。そことの差別化は、遊具が体を使って遊べるものであること。その点、レイジくんの案は水遊びやトランポリン、鈴を鳴らすことだから逸脱はしてないと思ってる。ただ、お客さんがこの未知の雲を見た時、懐疑的になるのは否めないだろうね。少なからずリスクのある挑戦になる」

「その勝負に出る、気概は?」


 まるで挑むようにブレイドは鋭く問う。対してロンはのほほんと笑った。


「ガーデンも開園して二十年だ。繁栄、安定を経て、そろそろ革命が起きる時代かもしれないね。僕もきみも老いたけれど、最後にひと花咲かせる余力は残してあるんじゃないかい?」


 ブレイドはフンと鼻を鳴らしただけだった。だがその表情はどこか晴れ晴れしい。

 ロンは左右に立つアナベラとレイジを手で示し、高らかに問う。


「滑り台か、屋内施設か。これからのガーデンに相応しいと思うほうに手を挙げて!」


 次の瞬間、ジャスパーとブレイドの迷いのない腕がそろって挙がる。それらは判決を待つ罪人のようにうつむき、拳を握り締めていたレイジのほうへと掲げられていた。


「うん。新遊具はレイジくんの案を採用する!」

『やったあー!』


 ジェーンはクリスといっしょに飛び上がって喜び、互いの手を取り合う。その勢いのままレイジに突撃すると、彼はまるく目を見開いてまだロンの宣言を飲み込めないでいる様子だった。

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