134 未来を担うは②

「ちょっと、まぬけ面やめてくれません!? かっこつかないんですけど」


 バシンッとなかなか勢いのあるクリスの平手打ちが、レイジの背中に決まる。ジェーンも便乗して両手でぽこぽこ殴った。


「レイジさーん! 私たちの案で決まったんですよ! レイジさんの遊具がガーデンにできるんです!」

「俺の、遊具が……? まじか……ははっ、そいつはめんどくせえな。これからサボれなく、なるじゃんかよ……」


 ジェーンはクリスに手で制されてハッとした。レイジは顔を覆い、まるまった背中をかすかに震わせている。けれど、彼が言葉通り悲観しているわけではないとわかった。

 そっと離れて、ジェーンはクリスとくすくす笑い合う。


「クリストファーさん、ありがとうございます。私だけじゃきっと、レイジさんの力になれませんでした」

「なに。きみまだそんな呼び方するの? いい加減、堅苦しいんだけど……」


 そわそわと髪を耳にかけるクリスに、ジェーンはきょとんと目を瞬かせる。クリスは一瞥くれたかと思うと、ちょっと唇を突き出して顔を背けた。

 じわじわと彼の真意を理解する。


「クリス! ありがとうございます!」


 感極まり、ジェーンはクリスに抱きついた。


「わっ、ひっつかないでよ! そこまで許してない!」


 すぐさま飛びのいたクリスだったが、呼び捨てのことはなにも言わなかった。




 レイジの新遊具――名を改めて〈ウォーターレイ〉は、プレオープンを経て五月から運営を開始した。案内係りの予行練習、水の深さ、カメラを入れる防水バッグなどの反応を見るためのプレオープンだったが、それが図らずも前評判を呼ぶ。

 〈ウォーターレイ〉はオープン初日から長蛇の列を作り、土日ともなれば急遽きゅうきょ、整理券を配るまでの事態となった。

 その人気にメディアが飛びつき、夕方の情報番組で取り上げられてさらに拍車がかかる。

 レイジが本来、集客を見込んでいた雨季を待たずして、〈ウォーターレイ〉は人気第一位の遊具に踊り出た。

 そしてクリエイション・マジック・ガーデンは、一ヶ月の来園者数過去最高記録を叩き出したのである。


「ジェーンこっちだ! 早く!」

「ダグラスっ、どこに行くんですか!?」

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