135 未来を担うは③
業務終了直後、整備部事務所の扉を叩いたのはダグラスだった。彼は驚くジェーンの手を引き、レイジとクリスも呼んで走り出す。
わけがわからないまま、ダグラスと繋いだ手のあたたかさに頬を染めるジェーンは、中央食堂に出て目をまるくした。
「おっ、今回の立役者が来たぞ!」
ジャスパーの張り上げた声を合図に、割れんばかりの拍手が食堂を満たす。そこにはルーク、カレン、プルメリアをはじめとする演劇部員たちが集まっていた。
誰かの指笛が鳴り響く中、ダグラスに背中を押されて輪に近づいてみると、園芸部のディノ、そして上司ブレイドまでもが来ていることに気づく。
「これはいったい、なんの騒ぎだ……?」
居心地悪そうに首を掻くレイジに、にやにやと笑うジャスパーがやって来て肩に手を回す。
「とぼけんじゃねえよ。お前ら革命者の偉業はみんな知ってんだ」
ジャスパーはレイジの頭を脇に挟み、フードに手を突っ込んで乱雑に銀髪をなで回す。
「やりやがったなあ! こいつめっ。今日は俺とブレイドの旦那のおごりだ! 楽しめよ、お前ら三人の祝賀パーティーを!」
片手を高々と掲げ、部下たちを煽ったかと思うと、ジャスパーはジェーンとクリスに顔を寄せてぼそりと吐いた。
「どうせあのケチベラは祝ってくれないんだろ」
ジェーンとクリスはそろって悟り顔になる。
祝うどころか、〈ウォーターレイ〉が盛況になればなるほど機嫌を降下させていった。具体的な人気度や来園者数の増加など、ジェーンはダグラスから聞かされて知ったくらいだ。
お陰で整備部の事務所内は、以前にも増して冷え込んでいる。さらにアナベラは、レイジやクリスに対しても当たりが強くなった。
私がふたりに関わってしまったから……?
ジェーンは手を握り込んで、視線を下げる。
「あの、せっかくですが私はいいです。私はただのお手伝いでしたし、それも本当に微力でしたから……」
ジェーンはクリスをちらりと見て距離を置く。「お前」とレイジから声をかけられたが、わざと無視した。
一礼で場を強引に切り上げ、きびすを返す。しかし、ジャスパーが先回って立ちはだかった。
「俺はお前を待っていた」
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