306 ウソつきの告白②
「ディノ! ああよかった! なにかあったのかと心配したんですよ! ブレイド部長もジャスパー部長も! なんで連絡を入れてくれなかったんです!?」
ジェーンは嬉々として駆け寄り、ディノの存在を確かめるように肩に触れた。ほのかなぬくもり、やわらかな感触が伝わってきてホッと息をつく。
養子の件でまた彼とは距離ができてしまったが、腕の傷を知って以来ディノはジェーンの中で、どうしても放っておけない存在になっている。それを今、泣き出しそうなくらいの安堵を味わって、強く実感した。
「私のこと嫌いでも……、それでもディノはシェアハウスの大事な家族なんですからね……」
思わず抱き締めようと寄せた体を、ゆるく押し返される。
「ディノ……?」
押されるまま一歩、二歩とあとずさっていくと、背中が壁にぶつかった。ディノはそのまま覆いかぶさるように壁に手をつき、自身の影でジェーンを囲む。
鼓動がドキリと跳ねた。おそるおそる長身のディノを見上げて、ジェーンは小さく息を呑む。
目を引くほどの真剣な眼差しが注がれていた。まるで魔力でも帯びているかのように、一度捕らえられたら若葉の瞳から目を逸らせない。
「ジェーン」
ためらいがちに紡がれた自分の名前は、ひどくかすれて切なく響いた。
「真剣に聞いて欲しい。あんたに危険が迫ってるんだ。ここから逃げたほうがいい、今すぐ。準備は昨日からしてきた」
「……なにを、言ってるんですか」
「信じがたいのはわかる。でも本当だ。冗談でもからかいでもない」
「逃げるって、なにからですか」
「ロンだ」
ジェーンは目を剥く。
「ますますわけがわかりません……」
首を振り、少し距離を取ろうとしたが、ディノの腕は道を開けてくれなかった。
いきなり現れて危険が迫っているなんて、冗談だと言われたほうがまだマシだ。ましてやロンが危険だなんてあり得ない。
ジェーンは軽く笑ってみせた。
「どうしてロン園長から逃げなきゃいけないんですか。あの方は見ず知らずの私に不自由がないよう、すべてを用意してくださったんですよ。寛大で慈悲深い恩人です。ガーデンの誰もが彼を慕っています。それを一番知っているのはディノですよね」
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