15 シェアハウスの5人③
「きみはここに座って。悪いけど先に自己紹介をしていてくれるかな。僕はちょっとディノくんと話すことがあるんだ」
暖炉前の三人がけソファを私に勧めるや否や、ロンは黒髪の無口な男性を連れリビングを出ていってしまった。
私の正面のソファにはジュリー女王とメガネの女性、そして左右のひとりがけソファからダグラスと桃髪の男性に挟まれる。
私はすっかり畏縮してしまい、ついダグラスに視線を向ける。すると彼は少し前のめりに座り直しながら、手を挙げた。
「じゃあ俺からでいいか? 俺はダグラス。演劇部のロジャー王役、二十六歳。好きな食べ物は肉だ。よろしくな!」
照れた時に見せるニッとした笑みも、私の中のダグラスと同じだった。叶うなら彼の隣に行きたい思いを抑えて、私は会釈を返す。
「あの、ダグラスさん。公園ではご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「いや俺も混乱してたし。きみの事情を思えば仕方ないよ」
「むしろ役得だったんじゃないっスかあ? こんなかわいい子に抱きつかれて」
横から茶化してきたのは桃髪の男性だ。灰色の目をにやにやと細めて、頬づえをついた格好からダグラスを煽る。
「バカ。思ってねえよ。確かに彼女はかわいいけど」
ダグラスのさり気ない褒め言葉に、耳がひくりと動く心地がした。自分の置かれている状況も忘れて、体は勝手に首まで熱くなる。居た堪れずに私はうつむいて、意味もなく指をさすった。
「もう。ほら、ルークのせいで彼女困ってるじゃない。慣れない人にそういう冗談はやめて」
ぺちん、と軽い音がして目を向けると、メガネの女性が桃髪の男性をにらんでいる。叩かれたらしいひざを抱え、桃髪の男性はへらりと笑っていた。
このやり取り、つい最近見かけた気がする。そう思った私の頭に、空飛ぶ船に乗っていたいたずら好きな鳥とそれを見張る狼の姿が過った。
「もしかしておふたりは、鳥と狼の着ぐるみを着ていた方ですか」
尋ねたとたん、ぎょっと見開いた四つの目が勢いよく私に向けられた。
「マジっスかあ。そこ言い当てられるって確かに記憶力、いや観察眼が鋭いっスね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます