14 シェアハウスの5人②

 そうしているうちに扉が開き、複数の男女が勢いよく出てきた。


「ロン園長! 待ってましたよ。彼女は退院できたんですか?」


 先頭に立ち、ロンに声をかけた男性はダグラスだった。しかも記憶にある通り、オレンジ色の髪の下でアメジストのように美しい紫の目が輝いている。

 私は両手で口を覆った。そうでもしなければまた彼に抱きついてしまいそうだった。


「そう。さっき退院してまっすぐここへ来たんだ」

「わー! よかった! とても苦しそうにしてたから心配してたの!」


 ロンが道をゆずるように身を引くと、ダグラスの横から女性が飛び出してきた。くりくりとした水色の目は、色こそ違えど既視感がある。


「えっと、ジュリー女王様……?」

「え! すごい! 私ってわかるの!? ウィッグもカラコンも外してるのに! すごい記憶力だね。ね、カレン!」


 ジュリー女王が振り向いた先には、メガネをかけた女性がいた。彼女はわざとらしく大きな咳払いをして、女王に冷静な視線を返す。


「プルメリア、落ち着いて。とりあえず中に入ってもらいましょう。ここは寒いわ」

「あっ、ごめんなさい。そうだね、中に入って。ロン園長もどうぞ」


 ジュリー女王に腕を引かれ、私とロンはダグラスが押さえてくれる扉を潜った。

 玄関には他にふたりの男性がいた。スリッパを用意してくれた明るい桃髪の男性は、私と目が合うと「ようこそっス」と気さくに笑いかけてきた。

 その奥で壁に寄りかかり腕組みした黒髪の男性は、なにも言わず左手の部屋に入ってしまう。


「こっちよ」


 メガネの女性が案内してくれたのも左の部屋だった。そこはリビングルームらしく、奥に火のついた暖炉があった。真ん中にはローテーブルを囲んで、ブラウンのソファが大小四つ並べてある。

 玄関側の窓辺にはひとり用の机とイス、そして本棚が置かれ、ちょっとした書き物もできる居心地のよさそうな空間となっていた。

 そして屋敷の裏側の壁半分はガラス張りで、引き戸がついている。一見温室かと思ったが、支柱にひもが渡してあるのが見えた。なるほど、サンルームだ。

 サンルームからは外の闇夜が見え、庭に出られるようになっていた。

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