13 シェアハウスの5人①

 目を凝らして見るとロンの言う通り、光輪で照らされたところに葉っぱや枝が見えた。それに木だと思って見れば、その形がぼんやり白く浮かび上がっている気がする。


「あれがうちのシンボルのひとつだね。源樹イヴは季節ごとに幹と葉っぱの色が変わるんだ。今は冬だから幹は白、葉っぱは青だよ」


 私はハタと気がついた。最初に目覚めた場所は、白くて壁のように大きな根っこで囲まれていた。それこそが源樹イヴだったのだ。

 建物に阻まれて源樹イヴは見えなくなってしまったが、私の目には光輪の神秘的な輝きが焼きついていた。


「驚きました。源樹イヴは神話の中の存在かと思っていました」

「ああいう不思議な樹があるから、神話が生まれたのかもしれないね。学者によると樹齢一億年はくだらないそうだよ」

「一億!? 想像も及びません……」


 バックミラー越しに驚く私を見てロンは朗らかに笑い、僕もだよと言った。


「さあ着いた。ここがダグラスくんたちのシェアハウスだよ」


 着ていたワンピースを入れた紙袋ひとつ持って、車を降りた私は、ロンが指し示した建物を見て目をまるくした。思わず一列分の窓を数えてしまう。


「窓が五つも! ここが本当に私の住む家なんですか」


 やさしいオレンジの外灯に、深緑色の壁が照らされている。大きめにゆったりと作られた格子窓には、上部に半円形の飾りがついていて、レースのカーテンが閉まっていた。

 アーチ状の玄関ポーチ脇には、白のベンチとプランターが並ぶ。見たこともない青い鈴の形をした花が植わり、北風に儚く揺れていた。

 三角の帽子にまるい胴体を持つアンティーク調の外灯ひとつ取っても、凝ったデザインがうかがえる立派な屋敷だ。


「広さは大したことないよ。きみも含めて六人で住むんだからね。ほら、体が冷えてしまう前に入ろう」


 痩身の老紳士を思って私は急いでポーチの階段を上った。ロンが握ったドアノッカーも、ブロンズのリース型でこだわりの意匠だ。

 高く重々しい音が三回打ち鳴らされると、ガラスとアイアンレリーフのはめ込まれた両開き扉の向こうが、にわかに騒がしくなった。私は急いで前髪を直し、服にホコリでもついていやしないかと払う。

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