180 バーベキュー!④

「それに見てたお客さんもとっても感動してたよ! きっと私だけじゃあんなに喜ばせることはできなかった。だからこれを受け取って欲しいの。大したものじゃないんだけれど」


 淡い水色のそれはポーチだった。受け取ってみると中になにか入っている。


「開けてもいいですか?」

「もちろん!」


 うなずくプルメリアを確認してポーチを開ける。すると中には色とりどりのグミが入っていた。陽光を透かし通し、きらりと輝くしずくの形。まるであの日のレーゲンペルラだ。


「ありがとうございます。とってもきれいでかわいいです! それにこんなポーチがちょうど欲しかったんです」


 ポーチは生理用ナプキンを入れるのにぴったりな大きさだった。


「ほんと!? よかったあ。色もね、ジェーンの目の色に合わせたの。いつも青いリボンしてるのがすごく似合うなって思ってたんだ」


 はにかむプルメリアの笑顔に、心があたたかくなる。グミよりもポーチよりも、ジェーンを思い贈りものを選んでくれた時間が尊いと思った。

 プルメリアは素敵だ。ドレスを着ていなくてもお姫様のように可憐で、笑い声はまるでカナリアの歌声だ。なのにその人柄は気取ったところがなく、周囲の人々をホッと安心させる。

 ダグラスの想い人。憎いと思ってもいいはずなのに、プルメリアの純粋でまっすぐな瞳にそんな気持ちはほだされてしまう。


「じゃあ私たちもマシュマロ食べに行こ!」


 もしダグラスと両想いになっても、プルメリアはこんな風に手を取ってくれるだろうか。都合のいい考えにひとり苦笑を浮かべる。

 その時ふと、こちらをじっと見つめるカレンに気づいた。彼女はジェーンと目が合ってバツが悪そうにうつむく。その横顔はなにか思い詰めているように見えた。




 お腹が満たされて、ジェーンたちは湖へとくり出した。そこには貸しボート屋があり、誰からともなく乗ろうと言う。

 ボートはふたり乗りで、どう分かれようかという話になった時、ルークがにんまりと笑った。


「男女で分かれるっていうのはどうっスか?」


 その瞬間、ダグラスとプルメリアの目が互いを映すのをジェーンは見てしまった。列車の中でも感じた入っていけない空気に、ジェーンは焦りを覚える。

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