214 新しい時代へ②

「俺たちはアナベラのやり方に慣れてしまっていた。理不尽や不正に気づいていても、楽を選んで黙認していたんだ。俺も、ノーマンのことは言えない。それに気づかせてくれたのがジェーン、お前だ」

「でも私は、特別なことなんてなにもしていませんよ」

「だからそれがすげえんだろうが」


 そこへラルフが会話に加わってくる。彼はニコライの肩に腕を預けながらにやりと笑った。


「女帝になにを言われようとひたむきに努力する。仲間がミスった時は助け合う。チームなら当たり前の思いやりや気遣いが俺らには欠けてた。ただまっすぐ歩いてこうとするお前の姿が、歪んでた俺らにはすげえって見えんだよ。ジェーンは間違いなく、革命の小皇女だ」

「僕もそう思います」


 うなずいたノーマンに、クリスとレイジもつづいて信頼の眼差しで見つめてくれる。


「ジェーンくんを認めてくれるのは僕としてもうれしいけど、さすがに彼女は経験不足じゃないかな」


 ごめんね、とロンは眉を下げた。それはジェーン自身が一番よくわかっていることだ。ジェーンはロンに微笑み返してから、もう一度ニコライを見つめる。

 その意を飲むかのように彼はあごを引いた。


「そうですね。ではジェーンが必要な経験を積むまでの穴埋めということでしたら、部長の任を引き受けます」

「私が部長になるの前提ですか!?」

「アナベラ二世だろう?」

「そのあだ名やめてください! 小皇女もイヤです!」


 心の底から叫んだのに、ラルフは噴き出して大声で笑い飛ばした。ニコライまでのどを震わせ口角をつり上げている。

 レイジからはちょっと引いた目で見られるし、クリスにはなぐさめられた。ノーマンからの視線は心なしか熱っぽいのは気のせいだと思いたい。

 だけどとても居心地がよかった。整備部に配属されてもう半年も経つのに、誰もが見たこともない晴れやかな顔をしている。あんなに冷えきっていた事務所にはぽかぽかと陽気が満ちて、壁も床も雲レンガになったかのように白く弾む。

 ジェーンは心のままに、壁際で見守ってくれていたディノに飛びついた。


「ディノー! ありがとうございます! ディノのお陰でクビにならずに済みました!」

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