222 もう一つのテープレコーダー③

「……本当にひとつか?」

「ん?」

「俺に隠してる望みが他にあるんじゃないのか」


 ディノの目が探るようにそろりと向けられる。そこに浮かぶ不安の色に気づき、ロンはいたずらっぽく笑ってみせた。


「バレたら仕方ないね。実は、できれば孫は十人くらい欲しいと思ってるんだ」

「んな……!」


 まぬけな声がもれた口を押さえ、慌てて顔を背ける息子をロンは笑い飛ばす。ギロリとにらまれてしまったが、こればかりはどうしようもない。いつまで経っても初々しい息子が悪い。


「だいじょうぶだよ、ディノくん。僕の言う通りにすれば誰も傷つけずに済む。今度こそ間違えないから」


 しばらく待ってみたが、いつもの素直な返事は聞こえてこなかった。わずかばかり込み上げてきた苛立ちを、ロンはため息で散らす。

 どうせ忘れるなら、すべてきれいさっぱり忘れていればよかったものを。

 自分の想いと彼女の想いに挟まれて苦悩する我が子が、不憫ふびんで愛おしかった。

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