200 反旗をひるがえす革命者たち①
そう思っているとひと雫の花がこぼれて、ディノの手を濡らした。
ディノは弾かれるように振り返った。驚きに見開かれた若葉の目はしかし、ジェーンの顔を見ておだやかにほころぶ。泣きながら笑っている自覚がジェーンにもあった。
忙しない感情がなんだか自分でもおかしくて、くすくす笑う。すると目からぽろぽろと涙がこぼれる。
ふいに、ディノの手が頬に触れた。涙を受けとめるように親指でなでられてドキリとする。
だけどジェーンはすぐに、いつもの戯れだと思った。落ち込んでいる時は真剣に向き合ってくれるディノだけど、調子を取り戻したとわかればすぐにからかってくる。
今回は言い返そうかな。
待ち構えていたジェーンだが、ディノはなにも言ってこない。気づくと彼の目にはどこか寂しげな色が浮かんでいた。
「ディノ?」
「……もう寝ろ。治るものも治らないぞ」
頬の手を掴もうとしたジェーンをするりとかわして、ディノは立ち上がった。意地悪なウソも笑みもなく、まっすぐ扉に向かっていく。
「おやすみ」
静かに閉められた扉の向こうに消えたディノを、ジェーンは呼び止められなかった。これがルームメイトとして普通の距離だと気づいたからだ。でも少しだけ、寂しく感じている自分に戸惑う。
それにしても、ディノの様子もちょっと変だったようだけど。
「……風邪ひいてるから、気遣ってくれたんだよね」
そうして自分を納得させ、ベッドに入る。涙で洗い流された目は、まもなくウトウトしはじめた。ディノのくれた安堵はゆっくりと、ジェーンの中で炎へと変わる。
「大人しく引き下がると思ったら大間違いですからね、アナベラ部長」
確固たる決意を胸に、ジェーンはしばしの休眠へ落ちていった。
翌日。
出勤していくルームメイトをやり過ごしてから、ジェーンもシェアハウスを出た。向かうはもちろん、整備部部長アナベラの元だ。
二重マスクと解熱薬で風邪対策はできる限りしてきた。あとは不用意に咳やくしゃみをしなければ、感染させることはないだろう。
「ロン園長やディノに頼ってばかりはいられません」
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