22 創造魔法の才⑤

「そしてねじねじします」

「だいじょうぶかよ。なんかきもいぞ……」


 呆れ混じりのディノのつぶやきは私の耳に届かなかった。その時にはローテーブルにかざした私の手の下で、三本の綿がうにょうにょと生えてきたからだ。

 魔法は使える。確かな手応えに私の想像は加速する。

 指を振って三つの白いリボンを舞い上がらせる。指先をくるくる回す動きに合わせ、リボンは綿に巻きつく。ラッピングされた綿は優雅に立ち位置を替えるダンスのように絡み、輪を編み上げた。


「サテンのつぼみ。花が咲きます。たくさんの青い花。レースの葉に彩られて」


 泡が弾けるように青いサテン生地のつぼみが、輪っかの下半分にあふれる。そしてゆっくりと回転しながら花弁が咲きほころび、レースの葉と寄り添い合う。

 私は仕上げに手を大きく下げた。すると輪の上から銀のリボンが滝のように流れ、それはみるみる蝶々結びとなり羽を広げる。

 私は小首をひねり、なにか足りないと考えた。


「ああ、そうだ。これです」


 リボンの結び目に三つの青い実を添えれば、想像通りとなった。


「わあ! これってもしかしてドアノッカーのリース?」


 ローテーブルに手をついてプルメリアが飛びつく。カレン、ダグラス、ルークもソファから立ち上がり、私が創った青の小花とリボンの布リースを覗き込んだ。


「はい。とてもかわいらしいデザインだったので想像しやすかったです」

「ねえねえ。これ部屋に飾ろうよ!」


 布リースを持ち上げてルームメイトに見せるプルメリアは、とても気に入ってくれた様子だ。うれしそうな笑顔に私の心もくすぐられて頬がゆるむ。

 しかし、ロンが慌てて手で制した。


「待ってくれるかい。物質変化で水蒸気に変えられるかも見たいんだ」

「あ……。そうですよね。ごめんなさい」


 伏し目がちに謝るプルメリアの手がせつな、布リースをぎゅっと握り締めた。私はとっさに彼女の手を押し留め、笑いかける。


「もうひとつ創ります。喜んでくれたものを消すのは惜しいです」


 プルメリアの顔がパッと明るくなった。

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