21 創造魔法の才④
底抜けに明るいダグラスの笑みは私の心を照らし、力強い言葉が芯まで響き渡っていく。ダグラスの存在がわけもなく私に勇気をもたらしてくれる。
やっぱり彼のそばを選んでよかった。その確信を握り締めて私は笑顔でうなずき返した。
「あ。笑った」
ぽとりと落ちたつぶやきが誰のものだったのかわからない。気づくとダグラスだけでなく、プルメリア、カレン、ルークからも凝視されていた。
果てには両隣にいるロンとディノも、私の顔を覗き込んでくる。
「笑った顔、素敵ね」
「うん。かわいい!」
「僕も見たかったな。もう一度笑ってくれるかい?」
女性陣から率直な賛辞を贈られ、横からはロンの無垢な目にねだられ、私は熱くなる頬を押さえた。自分の笑顔ひとつが、こんなに注目されるとは思わなかった。
だけど、自分でもひどく久々に笑った気がする。病院に入院していた数日間、洗面台の鏡に映る女性はいつも怯えたような眼差しをしていた。
「で。無意識に使った魔法は、意識してちゃんと使えるのか?」
『あ』
ディノが出し抜けに放った疑問は、リビングをしばし暖炉の熱気も及ばないほど凍りつかせた。再び私に集まった視線が痛い。
「と、とりあえず一回やってみようか」
雇うと言い出したロンの笑みは引きつっていた。私は立ち上がり、目の前のテーブルに向かったものの、両肩がやけに重く感じた。
もしも無意識に使った魔法がたまたまうまくいっただけだとしたら、ロンのせっかくの厚意もダグラスの期待も台無しにしてしまう。
なにより、記憶喪失の私を歓迎してくれる職場が、他にどこにあるというのか。今から披露する魔法に私の生活がかかっている。
「ジェーンくん。大切なのは想像力だからね」
「わかりました。やってみます」
ロンのくれた助言を胸に刻んで、ローテーブルの上に創りたいものを思い描く。最初はロンがやってみせた小鳥のぬいぐるみにしようかと思った。けれど心がいまひとつ動かない。
もっと素敵な、私の目を奪う造形があった。
「まずうにょうにょを創ります」
「うにょうにょ!?」
ルークがガタンッとソファからずり落ちた。
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