20 創造魔法の才③
「すごいです! なんでも創り出せてしまうんですか?」
「いや。創造魔法にもできないことがふたつあるんだ」
ロンは人さし指を立てた。
「ひとつは生命を創り出すこと。食べ物も生命に含まれて創ることはできないよ。大好きなおはぎを無限に創り出せたらよかったんだけどね」
茶目っ気を帯びたロンのぼやきに、プルメリアとカレンはくすりと笑った。
「ふたつ目は創ったものを消すこと。無から有を生み出せても、その反対はできないんだ。でもさっき言った物質変化を応用すれば」
手を差し出されて、私はロンに小鳥の銅像を返した。ロンはそれを両手で持ち、じっと見つめる。息をするのも憚れる静寂のあと、小鳥の銅が頭から白く変化していった。
しかしその変化速度は布から銅に変わった時よりもゆるやかだった。白くなったところから、小鳥の体は煙のように立ち昇って消えていく。
そして最後には跡形もなくなってしまった。
「こんな風に水蒸気に変えて消せるということだよ。ただ物質変化はなかなか大変で疲れるんだ。大きくて重いものは特にね」
ロンは長い階段を上った時のように、息を少し乱していた。
「さすが先生! わかりやすい説明っス」
ルークの威勢のいい声を皮切りに、ダグラス、プルメリア、カレンが拍手する。みんなに礼を言いながら隣に戻ってきたロンに、私は問いかけた。
「先生だったんですか?」
「うん。園長になる前は創造魔法士養成学校で教鞭を取っていたんだ」
「その学校に入れば誰でも魔法を使えるようになるんですね」
「確かに魔力は誰にでも備わっているものだけど、人によって得手不得手があってね。中学校までに魔法士の素質を見出だされた子が、希望で養成学校に入るんだ」
「さっきロン園長が創った小鳥」
プルメリアがひかえめに会話に加わる。小首をかしげながら、彼女は苦笑をにじませた。
「私がやったら三日はかかると思う」
そこまで個人差があるのかと内心驚く。ロンが小鳥を創ったのは五秒ほどのことだった。
「だからジェーンの魔力はすごいんだ。橋をあっという間に創ったんだから! 整備士として絶対活躍できる! あ、整備士はガーデンの遊具を管理する人な」
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