19 創造魔法の才②

 興奮した様子でイスから乗り出したダグラスの言葉で、私はようやく事態を呑み込んだ。


「ええ!?」


 思わず飛び上がるように席を立つ。


「でででも私、仕事ができるほどの技術とか知識はないと思います!」

「あるじゃないっスか」


 ルークからあっけらかんと肯定されて、私は目をまるくした。しかしルークもそんな私の反応に驚いたという顔をしている。


「あれだけの創造魔法ができれば整備部じゃ引っ張りだこ、って言いたいんスけどそのきょとん顔はもしかして……」

「ジェーン、あなたまさか魔法を無意識に使った?」

「ほら。船に橋をかけたやつだよ」


 ルークから言葉を引き継いだカレンの横で、プルメリアがすかさず捕捉を入れる。私は「あっ」と口を押さえた。

 メロディに乗った歌詞に導かれて、想像した橋が地面から現れた。それは私の望むままに形を変え、地上と船を繋いでみせた。

 あの時は混乱と不安と恐怖に陥り、その最中さなかダグラスを見つけた歓喜で不思議な現象に驚く隙もなかった。


「あれが創造魔法と言うのですか?」


 そう、と答えたのはロンだった。

 ロンはゆっくりとソファから立ち上がり、手で私に座るよううながした。そして片手を軽く掲げてみせる。すると彼の手のひらの中で青い光が生まれた。

 それはヒュンヒュンと高音を鳴らしながら、目にも留まらぬ速さで渦巻いて、なにかの形を成していく。

 瞬きする私の目の前で、ころんとまるい青い鳥のぬいぐるみが創り上げられていた。


「これが創造魔法だよ」


 ぬいぐるみを差し伸べられて私は受け取る。薄手ながらハリのある生地の中に、綿がぎゅっと詰まっている感触だ。


「想像したものを生み出す魔法の力。そして創ったものに手を加えたり」


 青い鳥にロンが人さし指で触れると、毛足の長い黄色い生地へと変わる。


「物質変化させることもできるよ」


 言いながら今度は爪先でトンッと叩く。すると小鳥は急激に重くなった。私は慌てて両手で支える。

 さっきまでふわふわのぬいぐるみだったものは、金属の光沢を放つ銅像になっていた。

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