23 よろしくねジェーンさん①
ふたつ目の布リースは最初よりも速く創造でき、リボンが巻きつくそばから棒状の綿は絡み合った。それをまずはドアノッカーと同じ鉄に変える。そして、ロンがやってみせたように水蒸気となって立ち昇っていく様を想像した。
しかし、思い描く映像とは裏腹に全身を重たい空気が包む。鉄のリースは気泡のほとんどないパンのように密集し、硬く、見た目の大きさよりもたくさんの水蒸気が吐き出されていく。
すべてを創り変えるのに一分近くかかってしまった。
「うん。これだけの大きさと重さのものを水蒸気に変えられたら上出来だよ。がんばったね」
私は息を整えながら、満足げにうなずくロンを見た。
「では、私を雇ってくれますか?」
「もちろん。歓迎するよ、ジェーンくん。僕たちといっしょに魔法の庭を創って欲しい」
ロンはゆったりと両手を広げ、クリエイション・マジック・ガーデンで働く従業員であるダグラスたちを指し示した。そして片手が私に向けて伸ばされる。
答えを待つロンを前にして、言い知れない不安が過った。記憶にほころびがある私に、どこまでやれるかわからない。ともすれば、この場にうずくまってしまいたい衝動が瞬く。
けれど、ダグラスがそこにいるのなら、彼がいっしょにいてくれるのなら、無理だってできる。
私はロンの手を掴んだ。
「よろしくお願いします、ロン園長」
私がサインしたいくつかの書類を持って、ロンは帰っていった。玄関まで見送りに立っていたルームメイトたちは、そのまま私を案内すると言って玄関から向かって右の部屋へ通す。
「ここはキッチンとダイニングよ」
そう言ったカレンにつづいて中に入ると、奥にカウンターキッチン、手前に六人がけのテーブルとイスが置かれていた。
「このシェアハウスが最大六人で住むことを想定して創られてるから、家具もだいたい六個そろってる。ほら、カウンターのイスも六つあるだろ」
ダグラスが指さしたキッチンカウンターの正面には、背の高い丸イスが六脚並んでいる。
「おしゃれですね」
「こうすればもっとおしゃれだよ!」
布リースを抱えてプルメリアがキッチンに駆ける。冷蔵庫や食器棚が並ぶ壁にリースを掲げてみせた。
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