328 ジェーンの秘策③
「構わないよ。今戻っても仕事に手がつかないからね」
わかりました、とうなずいてジャスパーはダグラスたちを手招く。
「よし、はじめるぞ。気合いを入れ直せ。集中不足は怪我のもとだからな。ジェーンはサプライズ演出の確認だ。そこでちょっと待ってろ」
こうなればジェーンは動けない。ジャスパーの隙をついたとしても、ロンが必ず阻んでくる。ディノを捜し出すことは不可能だ。
「パーティーが終わるまで待たないとダメか」
「だいじょうぶかな……」
「正直なんとも言えないわね」
しぶしぶと歩き出しながら、ダグラスとプルメリア、カレンは不安げな互いの顔を見合う。
ジェーンは甘く見ていた自分を罵った。ロンは思っていたより
ロンが相手では圧倒的に分が悪い。下手をすれば、最高責任者の権力を行使されどんどん追い込まれる。最悪はルームメイト全員解雇だ。
けれどジェーンはチャンスだとも思った。ロンは今、こちらに釘づけだ。その監視さえ掻い潜ってしまえば、気づかれずにディノを助け出せる。
ディノの居場所がわかっている今のうちに行動しないと!
「まあ、焦らず機会を狙って――」
「ルーク!」
「はいいい!?」
ルームメイトたちを元気づけるルークを見て、ジェーンはひらめいた。思わず叫んで彼の肩をがっちり掴む。
しかし我に返ると、全員がジェーンに注目していた。ロンの目は明らかに怪しんでいる。
「ええっと、ジャスパー部長! サプライズ演出についてメインキャラクターの方々に二、三点注意事項があるので、五分だけ時間もらっていいですか!?」
とっさに思いついた言い訳を口走りながら、ジェーンは後ろ手に魔法を発動させて紙を創る。
「却下だ。あとにしろ。今いい感じにまとまりつつある流れを止めたくない」
「ですよねー。すみませんでした。どうぞダンス練習に入ってください」
謝罪は口から出るに任せ、ジェーンは創造した紙に文字の加工を施す。気にかけながらも再び歩き出したルークの手に、そのメモを握らせた。
「みんなで回し読みしてください」
「……了解っス」
すぐに離れようとすると「ジェーンちゃん」とルークがささやく。
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