125 こちら挑戦状です④
ファイルを肩に担ぎ、へらりと笑って登場したレイジにロンは目をまるめる。その横でアナベラは冷ややかに表情を固め、鋭い視線をジェーンに飛ばした。
「クリスはともかく、なぜジェーンがここにいるのかしら」
「ふたりとも俺の協力者だからです」
園長、とレイジはすかさずロンに詰め寄り、これ以上口を挟ませない。
「俺とクリスとジェーンも案を考えてきました。それを見てから決めてくれませんか」
「案はふたつあったんだね。見せてくれないなんてずるいじゃないか、アナベラ部長」
「そ、それは園長のお手をわずらわせると思いまして……」
ごにょごにょと弁解するアナベラには構わず、ロンは「見せてごらん」とレイジに手を差し出す。
ファイルをめくるごとに、深いしわが刻まれたロンの目は少年のように輝いていった。
「うん、いいね。実におもしろい」
「園長! これは私の案で決まったことです……!」
「そうだね。アナベラ部長もレイジくんも、僕の一存で簡単に決められては納得しないよね。そこで、楽しい方法を思いついたよ」
「楽しい方法ですか?」
首をひねるジェーンにロンは笑みでうなずいて、腰の携帯型無線機を手に取った。そしてなにやら次々と通信していく。
アナベラの足が文句を言いたげに貧乏揺すりをはじめた頃、更地にふたりの男性が現れた。
ひとりは遠目からでもすぐにわかる。サイケデリックな色調のトレーナーと、蛍光色のパンツを合わせた演劇部部長ジャスパーだ。
「ロン園長、お疲れさまです」
会釈したジャスパーの横で、ロンと同世代に見える
前髪までしっかり短く刈り上げた頭髪に隙はなく、厚ぼったいまぶたの奥から覗く黒い目は、静かにこちらを見据えている。あごひげをたくわえ、口は半ば埋もれていた。
「ジャスパー部長、ブレイド部長。急に呼び出してすまないね。でもきみたちが掴まってよかったよ」
ロンがブレイドと呼んだ大柄の老人は、ディノと同じつなぎ服を着ている。園芸部の部長に違いないとジェーンは思った。
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