316 消えたルームメイト②
ロンは執務机から立ち、退室をうながした。彼はジェーンを見据えて笑みを深める。すると急に身を寄せてきて、ジェーンの耳にささやきかけてきた。
「ランチの約束は忘れてないよね」
答える前に腕をグイと引かれる。ジェーンをロンから離したのはルークだった。
「お邪魔しやしたあ」
ルークはジェーンを押し、前を歩かせた。背中にあてられた手からは、すぐにでも部屋を出たいような力を感じる。
外階段を下りるなり、ダグラスが歩きながら口を開いた。
「どう思う」
「不自然だわ」
カレンが短く答える。
「うん。なんだかいつもの園長さんじゃなかった。連絡を忘れてたとしても、『どうしたんだい』なんて言わないよ。私たちの顔を見たらディノくんのことだってピンとひらめく。そういう人だったもん」
「俺もプルメリアに同感だ。さっきのロン園長はどこかよそよそしい。病院の名前を忘れたっていうのもわざとらしかった」
ダグラスの言葉にカレンは、ふふっと笑みをもらす。
「私たち、そういうのにうるさいものね。わざとらしい演技は肌でわかるわ」
「ああ、そうだ。問題はなぜウソをついたか、だ。ディノはどこに行った? 入院も熱病もウソなら……」
「どこかに閉じ込められている」
ダグラス、カレン、プルメリアが弾かれるように寄越した視線を、ジェーンは静かに受けとめた。
「ジェーンそれは、なにか根拠でもあるのか?」
「ディノはロン園長は危険だと言ったんです。その、ある企みがあって……」
ダグラスにそう返したものの、つづく言葉が見つからずジェーンの声は弱くなる。
ディノはロンから逃げろと言った。話し合うだけでは足りない。行動に移さなければと思うほど、ディノは義父に危機感を抱いていた。
しかしディノの突飛な話をすべて飲み込むわけにはいかないジェーンは、説明に迷う。かつての栄華を取り戻す、というロンの目的も具体的になにをする気かわからない。
「俺も、ジェーンちゃんと同じこと考えてたっス」
そこへ、声を上げたのはルークだった。カレンとプルメリアが不安げな目を、神妙な顔つきをしたルークに向ける。
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