317 消えたルームメイト③
「俺たちが思っていたよりも、虐待は深刻化してたんじゃないんスかね。ディノの部屋に荷造りされたリュックがあったんスよ。ね、ジェーンちゃん」
その線だ、とジェーンはハッとした。
「はい。ディノは私に逃げろとも言いました。ショーのお客さんの期待や信頼を裏切ってでも」
「ディノがロン園長の虐待から逃げようとしていた? そうか、それでジェーンが養子になることに反対したのか! でもバレて、捕まった……」
「もしそうならかなりまずいわ。家庭内暴力はエスカレートしやすいのよ!」
ダグラスの推測を聞いて、カレンは緊迫した顔で訴える。
「ディノくんを捜さなきゃ……!」
「どこを? それより警察に通報したほうがいいんじゃないっスか?」
青ざめるプルメリアの肩を押さえて、ルークは冷静に提案する。
「でも取り合ってくれるのか? 俺たちは暴力の現場もディノの傷も見たわけじゃない」
ダグラスから視線を送られて、ジェーンは歯がゆく拳を握り首を振る。ジェーンとて血のついたティッシュを見ただけだ。
「そうね。たとえ取り合ってくれたとしても、今すぐ動いてくれるものでもないと思うわ。緊急性が認められない限り……」
「成人男性がひと晩行方をくらましたくらいじゃ、薄いっスよね……」
警察の対応についてジェーンは疎かったが、カレンとルークの表情を見ると期待は持てなさそうだ。第三者からすれば地位も人望もあり、なによりディノの親である人物の言葉のほうが、よほど最もらしく聞こえるだろう。
だけどディノはその親子の絆に苦しめられている。ロンからの暴力被害をディノは言葉にしなかった。父への情と心の痛みに苛まれている様子だった。
ずっとひとりで傷の手当てをしていたのも、ロンはきっと目を覚ましてくれると信じていたからだ。そんな父に裏切られ友と引き離された心からは、今も血が流れつづけている。
「やっぱり私たちで捜しませんか」
「ジェーンちゃん……。でもあてがないんスよ」
「だったら全部捜せばいいんです。ディノとロン園長に関係のある場所、ありそうなところ全部!」
弱った顔をしていたルークは、ジェーンの言葉に目を見張った。そしてダグラスとカレン、プルメリアを振り返る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます