08 見知らぬ場所⑤

「だいじょうぶ? ダグ」


 それまでおろおろと見守っていたジュリー女王が、ダグラスの腕にそっと触れ気遣う。私ではなく、「だいじょうぶ」と微笑みかけられている女王に焦燥と悔しさが募る。

 彼の隣は私のものなのに!

 だけどさらにひどい痛みが襲ってきて、私は唇を噛まなければならなかった。頭の中を直接殴りつけられているかのような激しさに、嘔吐おうと感までのどを突いてくる。


「あなたも怪我はありませんか?」


 ひざを折り、私をうかがったジュリー女王の桃色の目がハッと見開かれる。私は冷や汗が浮かぶのを自覚しながら突っ伏し、頭痛と吐き気に耐えて息をするのがやっとだった。

 すぐに慌ただしい人の話し声と物音がいくつか駆け回りはじめる。観衆からどよめきが広がる空気の震えを、肌で感じた。

 私は恋人を求めて闇雲に手を這わせる。


「ダグ……ダグ……。どうして、ですか……」


 圧倒的痛みの前に、私は眠りに落ちることしか逃れる術を知らなかった。

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