122 こちら企画書です①
「まあともかく、俺もジェーンちゃんの恋を見守ってるっスよ。カレン先輩みたいに応援するとは、はっきり言えないんスけど」
カレンの名前を出すと、ジェーンの顔から笑みが引いていった。訝しむように首をひねる。
「どうしてカレンは私を応援してくれるのでしょうか。私はてっきりプルメリアのほうを……」
「あー。それは本人に聞いたほうがいいと思うっス。俺の口からだとどうしても邪推が入るんで」
苦笑を浮かべてルークは思わず天井に目を回した。この恋にはディノだけじゃない。カレンの思いも少なからず絡んでいる。
親友とも呼べるルームメイトたちだが、めんどくせえと思ってしまう心は止められなかった。
* * *
ジェーンは隣席のレイジから目配せされてうなずいた。向かい席のクリスとも視線を交わす。そして、ゆっくりと席を立ちファイルに収めた書類を手に、部長席でずんぐり構えるアナベラに向かっていくレイジを見守った。
およそ一ヶ月かけて、練り上げた新遊具の企画書がついに完成した。昼休みと、アナベラが退勤したあとの終業後に集まって、それぞれ意見をぶつけ合った。更地になった創造予定地で試作を創り、何度も改良した。
そのでき映えは、クリエイション・マジック・ガーデンの新たな目玉として相応しい。そう自負できるほどだ。
確信と積み重ねてきた努力が、まっすぐ伸びたレイジの背中にみなぎっている。
「アナベラ部長」
いつもより硬質な声でレイジは上司を呼ぶ。ジェーンの耳はぴくりと震えた。クリスも依頼書を整理しながら、緊迫した表情をしている。
「新遊具の企画書ができました。確認してください」
「おや。ご苦労さん」
アナベラはやわらかく受け答える。ジェーンは横目でちらりとうかがった。
差し出されたファイルをアナベラは笑顔で受け取り、突然手を放した。カンッと、ファイルがゴミ箱の底を叩く音が響いた。
「遅い」
まるで人が変わったかのように低く、おどろおどろしい声でアナベラは一喝する。
「今さら持ってきてどうするんだい。園長への提出日まで一週間しかないじゃないか。私がそんなに暇に見えるのか? それとも私の意見は挟ませないつもりか?」
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