67 怠惰先輩の憂鬱①
するとまもなく白い
ジェーンは左右をきょろきょろと見回して扉を見つけると、中に入った。掃除兼雑用係でも整備士の制服を着ていれば文句は言われないだろう。
「木がない。切ったんだ」
そこはすっかり更地になっていた。なだらかな丘がつづき、端のほうにまだ運び出していない丸太が積み上げられている。
「ん? 誰かいる?」
その丸太の小山に人影が見えた。最初は林業を営む作業員かと思ったが、その人物は腕を枕に寝転がっている。
まだ昼休み前にだらけきっている人なんて、ジェーンはひとりしか思い浮かばなかった。
「レイジさん。こんなところでなにやってるんですか」
丸太の小山に向かって呼びかけると案の定、風に吹かれる銀髪がさらりとこちらに流れる。
「お前こそここでなにやってんだ」
そう言いつつ、褐色の肌に映えるレイジの水色の目は、どうでもよさそうにジェーンを見やる。怠惰先輩はジェーンの返事を待つことなく、顔をまた空に向ける。
ここから話しかけても
「レイジさーん」
顔を覗き込むとレイジは目をつむっていた。しかしジェーンの落とした影がうっとうしいと言うように、目元をひくりと動かす。
タヌキ寝入りだ。ジェーンは内心ため息をついて、レイジの足元に移り丸太に腰かける。
制服のポケットからくしゃくしゃになった紙束を取り出した。
「レイジさんにまた難癖つけられると困るので、開発に関係ありそうなメモは取っておきましたよ」
ところがレイジはちらとも見ないで、丸太の上で器用に寝返りを打ち、背を向けた。
「いいんだよ、それは。全部ボツだ」
「そうなんですか? この巨大ブランコとか楽しそうですよ」
「見てんじゃねえよ」
レイジに鋭くにらまれて、ジェーンは笑みで誤魔化しながらサッとメモ紙を畳んだ。
それを寄越せと言わんばかりにレイジの手が突き出される。素直に渡すと紙束は目の前で握り潰された。
「ちいせえんだよ。この広い空間に対して、俺の案はどれも小さい。創造魔法士として魔力や知識はあっても、俺の想像力はしょせんそんなもんだ」
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