281 It's show time②

 それは一見して巨樹の枝に映った。しかしシャルドネが中央で優雅に足を組み、座る姿を見て観客は理解する。大空の国から遣わされたドラゴンの刺客。黒水晶はまさに彼女の紫黒しこくの翼だった。


「あの水晶どうなってるんだ」

「え、まさか今創ったの……?」

「待ってシャルドネちゃんめっちゃエロかわいいんですけど!」


 驚愕、動揺、興奮でざわめく会場中の視線を一身に集めながら、シャルドネはロジャー王と相対した。民や臣下たちを置いてきた王の罪悪感につけ込み、シャルドネは言葉巧みにロジャー王を連れ去ろうとする。

 しかしそこへジュリー女王と源樹イヴ、神鳥アダムが駆けつけ、ロジャー王の迷いを晴らした。一気に分が悪くなったシャルドネは、強行手段に打って出て魔法を放つ。

 残忍な牙と化した黒水晶がロジャー王に襲いかかった。それをすんでのところで避けた王に、容赦なく第二波が迫る。

 野原の大地が揺れ動いたかのように、観客は一斉に震え息を止めた。二撃目も難なくかわしたかに見えたロジャー王だったが、青空色のマントが切り裂かれたのだ。

 それでも王はひるまず、シャルドネへ踊るように一気に詰める。


『今宵は光と闇が交わる特別な夜。わからないと言うなら、きみで俺を染めてくれ。今日だけは許されるだろう。その心に触れても』


 恋人を抱き寄せるような仕草、お菓子よりも甘い言葉に女性の黄色い悲鳴が沸く。しかしそれはすぐにどよめき、そして歓声へと変わった。

 ならばわからせてやる、とシャルドネの放った魔法がロジャー王たちを黒く染め上げていく。不安の声をもらす観客も見守る中、ロジャー王とジュリー女王はシャルドネとよく似た黒衣に変身した。

 あまりの早業に会場からは拍手が起こる。その手拍子を待ってましたと言わんばかりに、動物とスイーツを組み合わせた衣装をまといダンサーたちが颯爽さっそうと舞台を取り囲んだ。

 そして再び音楽が鳴りはじめる。一音目から飛び出すコーラス、アップテンポな曲調に乗せて、強烈に刻みつけるビート。ところどころに散りばめられたメインテーマの編曲に気がつけば、観客もたちまち笑顔になる。


「このアレンジ最高お!」

「これぞザ・ガーデンの曲って感じだな!」

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