323 裏神話③
カニさんウインナーを飲み込んで、ロンは優雅に微笑む。
「それはね、このガーデンをかつての神話時代のように繁栄させることだよ」
ジェーンくんは神話をどこまで知ってるかな? と口ずさみながら、ロンは席を立つ。そして執務机横の本棚からいくつか本を出してみせた。
その中にジェーンが図書館で見た絵本もあって、思わず声をもらす。ロンは絵本を携えて戻ってきた。
「そうだね。神話に関連する書籍は数あれど、最も要約されているのはこの絵本だ。一番有名な神話の内容でもある。だけどね、これは間違っているところもあるんだよ」
「えっ」
「確かに人は神から魔法を授かったが、神が人間を創ったというのは誤りだよ。元からいたんだ。そして神は気に入った人間を捧げさせる代わりに、魔法を与えた。その人物がジュリーとロジャー。神話では王族扱いだが、実際の政権はたくさんの大臣たちが握っていた。だから王というよりは神官だね」
「ずいぶんとお詳しいんですね。それに……まるで見てきたように断言される」
ロンは軽く肩をすくめてみせる。
「これでも魔法学校の元教師だからね。それに、ガーデンを創るにあたって神話の文献は読み込んでいるんだ」
絵本から顔を起こし、ロンは壁に掲げられたクリエイション・マジック・ガーデンの絵画を見上げる。
「僕はね、この神に愛された創造魔法士たちで、国を再建したいんだ。このガーデンに」
「再建? 再現ではなく? ロン園長、神話はおとぎ話ですよね」
ロンはジェーンを振り返り、にっこりと口角をつり上げる。目は子どものようにキラキラして、頬をわずかに上気させていた。
「どちらも同じことだよ。源樹イヴは実在するし、きみのように優秀な創造魔法士もいる。探せば他にもいるかもしれない。奇跡の種が」
ロンがゆっくりと歩み寄ってくるごとに、視線の熱量が増していくようだった。ジェーンは思わずソファの端へ移る。
「でしたらディノは、自由にしてあげてもいいんじゃないでしょうか」
「どういうことかな」
「彼は、園長の夢に乗り気ではないようでした。ディノは創造魔法士ではありませんし、好きなことを自由にさせてあげては」
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