52 シェアハウス全会議②

「あとはゴミ置き場でディノと会えました」

「えー! いいなあ。私たちも会いたいよね、カレン。ジェーンが演劇部の衣装担当になってくれたらいいのになあ」


 泡を洗い流し、今度はコンディショナーをていねいに浸していくプルメリアが羨ましがる。ジェーンはきょとんと首をひねった。


「衣装担当。それも整備部の仕事なのですか?」

「そうだよ。あとは舞台セットとかもね、うちのジャスパー部長といっしょに創るの。今の担当はアナベラ部長なんだけど……」


 プルメリアはそこでいったん言葉を切り、シャンプーの泡を落としたカレンと顔を見合わせて苦笑う。それだけでジェーンはなんとなく察しがついた。


「あの人すぐ疲れるとかめんどくさいとか言って、ジャスパー部長の案を変更させるのよね。やりたいことができないって、かなりやきもきさせられてるみたいよ」


 カレンの言葉にジェーンは深くうなずく。我を押し通すアナベラの姿がありありと目に浮かんだ。


「ちょっと癖のある人だよね。ジェーンも困ったことがあったら言ってね。私たちでも力になれることがあるかもしれないから」


 アナベラのことはやんわりと避けて、プルメリアはジェーンに微笑みかける。ジェーンはさっそく彼女たちの知恵を借りたいと思った。困ったことと言われ、昼間のロンとのやり取りを思い出したのだ。


「あの、私昼食を買うお金もなくて、今日はロン園長に買ってもらったんです。でも、給料日まで頼りきるのも悪くて……。なにかいい方法はありませんか?」


 我ながら情けない話で、ジェーンはうつむいていた。ところが、しばらく待ってみてもプルメリアからもカレンからも返事がない。

 不思議と思って顔を上げると、ふたりはそろって固まっていた。

 目は驚きに見開かれジェーンを凝視している。やっぱりこんな恥ずかしい相談はやめておけばよかったかと口を開きかけた時、プルメリアが勢いよく挙手した。


「緊急会議い! 会議の召集を提案しますカレン議長!」

「ええ。これは由々しき問題よ! 早急に全員集めるわ!」

「え」


 なにが起きたのか飲み込めないジェーンを置き去りにして、プルメリアとカレンはさっさと髪を洗い終えた。そして湯にも浸からずに「ジェーンはゆっくりでいいから」と言い残して、浴室を出ていく。

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