207 援軍③
ガーデンの中でずっと迷子になっていたのは、自分のほうだった。どこへ向かいなにをすればいいのかわからないばかりか、自分の存在価値でさえ見失いかけていた。
でも関わってきた多くの人たちの中に“ジェーン”がいる。彼らが教え、導いてくれた。今まで通ってきた道の正しさを。
「このようにジェーンさんはガーデン運営に支障をきたすどころか、リピーターを獲得し貢献しております。一番人気の遊具〈ウォーターレイ〉の創造にも関わった方ですし、解雇する理由など私には皆目見当たりません」
アナベラはたじろいだ。机につまずいてガタンッと大きな音を立てる。その隙をつくようにラルフとレイジが一気に詰め寄る。
「そうだ。遅刻だって終業ギリギリに変更したのが悪い。それを知らせもしないなんて卑怯だろうが!」
「俺ら全員が証人になってやるよ。ジェーンは理由もなく遅刻もサボりもするようなやつじゃない!」
壁際に追い詰められ、なにかを探すように目をさ迷わせていたアナベラだが、ふと一点を見て止まる。強張った頬に不敵な笑みを張りつけた。
「いいだろう。遅刻や職務怠慢は私の勘違いだって認めてやってもいい。でも、経費の問題はどう言い訳する? これは重大な規則違反だ!」
レイジ! とアナベラは出し抜けに部下を呼びつける。
「お前、全員が証人になると言ったね。ジェエエエンの身の潔白が証明されなかった時、どう責任をつける。私に全員クビをはねられてもいいのか!?」
「いいだろう」
答えたのはニコライだった。彼はアナベラの正面に立ち塞がり、にらみ合う。
しかし、これに青ざめたのはジェーンのほうだ。対峙するふたりの間に慌てて飛び込み、ニコライを押し留めようと腕にすがった。
「ニコライさん! ダメです! そこまでして頂くわけにはいきません……!」
「黙って胸を張ってろ。どのみち俺らはもう、この女の下ではやっていけない。そうだろ?」
ニコライが後ろの同僚たちに視線を投げかける。するとレイジとラルフが間髪入れず笑みで応え、ニコライにつく。せつな固まったクリスとノーマンも、確かな意思を目に宿して加わった。
「みなさん……」
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