178 バーベキュー!②
シュヴァン湖のほとりにあるキャンプ場は、広大な森と隣接していた。そこから目を上に移すと、かすみがかった空に雄大な山が青くそびえ立つ絶景を拝める。
その峰々はいったいどこまで連なっているのだろう。ジェーンが見渡す限り、山脈は遥か彼方までつづいていた。
「ジェーンちゃんは森の噂って知ってるっスか?」
そこへレモンジュース片手に、ルークがふらりとやってくる。心なしか剣呑な色を帯びた彼の目にひるみつつ、ジェーンはそばの森をちらっと見やった。
「森って、あの森ですか?」
「そお。一度入ったら出られない迷宮の森っス」
ぞくりとしたものが肩を震わせる。ルークは声を一段と低くして、獲物に忍び寄る狩人のようににじり寄った。
「森に入るとコンパスは狂い、電子機器は謎の故障を起こす。焦って戻ろうとしても、行けども行けども出口が見えない。そしてふと、気づくんス。『あれ。この木さっきも見たぞ』と。ループから抜け出せない遭難者はやがて気が狂い、最期は――」
言いながらルークは自分の首を締める仕草をしたかと思うと、ワッ! と大声を出して迫った。
「きゃあ!」
ジェーンは思わず悲鳴を上げあとずさる。と、足がイスにつまずき体が大きく傾いた。とっさに目をつむったジェーンだが、力強いぬくもりに支えられる。
ハッと見上げるとディノに抱きとめられていた。
「ディノ……」
ディノはなにも言わずジェーンをそっと離し、鋭く眼光を飛ばす。その先には、カレンに「やり過ぎ」と頭をはたかれて苦笑うルークがいた。
迷宮の森の話はウソだと気づき、ジェーンはムッと唇を曲げた。
「ルークまでからかわないでください。ウソつきはディノだけで十分です」
「俺をあいつといっしょにするな」
いっしょでなければなんだというのか。心外だと言わんばかりに腕組みするディノに、ジェーンはぽかんとした。
「いやループは確かに言い過ぎだけど、コンパスとかが狂うのは本当なんだ」
そこへダグラスが訂正を入れる。ジェーンは驚いた。どういうことかダグラスに目で問う。
「このへんの土には
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