80 のち虹①

「通しいくぞー。クリスとジェーンを客だと思って全力で楽しませろ!」


 舞台の両袖に捌けた部員たちに向かって、ジャスパーがげきを飛ばす。ジェーンはクリスと並んで舞台前に座り、その時を今か今かと待っていた。

 横に立ったジャスパーが小型リモコンを操作する。

 一拍の緊張の間を挟み、舞台脇の巨大スピーカーから爆音が走り出した。キレのあるドラムとエレキギターの音。その切れ間に入るコーラスの響き。楽しい呼び声に誘われるようにして、華やかな人々が飛び出してくる。

 彼らの動きに合わせて衣装は軽やかに舞い、揺れて、体に寄り添う。

 そして狼と鳥につづきロジャー王が、ジュリー女王の手を引いて現れた。ふたりは颯爽と舞台中央まで進み、優雅に、しかしわずかな時間離れるのも惜しむかのように手を離した。

 だが、観客へ歩み寄る動作は一糸乱れず、歓迎するかのように手を広げる。ロジャー王の青いマントが風もないのに舞い上がった。ダグラスはどうすれば衣装を魅力的に着こなせるか、熟知しているようだった。

 ジュリー女王はドレスの裾をつまみ、体を揺らしながら回る。夢見る乙女のように指を絡め、うっとりと小首をかしげた時小さく手を振った。

 ジェーンはそれが自分への合図だと気づいた。けれど照れが邪魔をして、とっさに反応できなかった。ジュリー女王は気にした風もなく、口に手をあて無邪気に笑う仕草をする。

 そしてロジャー王は神鳥アダムと、ジュリー女王は狼に身をやつした源樹イヴと、それぞれ視線を交わし触れ合う。

 次の瞬間、歌声が響く。それはクリエイション・マジック・ガーデンのメインテーマ曲だとジャスパーが教えてくれた。


 目を開けて (顔を上げて)

 大樹の塔や雲の城が見えるかい

 ここは魔法の庭 (きみと僕の)

 心を解き放つ 創造の世界


 僕といこうよ

 いっしょに迷子になろう

 扉のカギは想像力 それだけでいい

 もう子どもじゃないって? 関係ないよ

 僕たちはいつだってここできみを待ってる

 さあ想像して


 霧深い森を探検して宝石の木を見つけよう

 虹の橋を渡ったら雲の上に寝転んで

 銀河のせせらぎを聞く

 時間の許す限り 目を覚まさないで

 過去を捨て 振り返らないで

 夢を見よう

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