227 新舞台担当③
「クリス、私前に座りますね……」
「行ったほうがいいよ。あれはあとが怖いやつだから」
幸運を、と送り出されジェーンはこそこそと前へ移った。するとプルメリアが自分の隣をあけてそこを叩く。よりにもよってど真ん中だ。
ルームメイトたちに穴があくほど見られながら、ジェーンは観念して座った。
その瞬間、ふわりとプルメリアに抱き締められる。
「話さなくていいよ」
むくれた声とは裏腹なやさしい言葉に、ジェーンは目をまるめた。
「もう終わったことなんでしょ。それに、今ジェーンとても楽しそうな顔してる。それならいいの。私たち、ジェーンが笑ってくれるならそれでいい」
でも、とつづけながらプルメリアはいっそうジェーンを引き寄せた。
「心配させられた分、甘えるからね」
「甘える、ですか?」
「ん」
どちらかと言うと甘えさせてもらっている気がする。肩口に顔を埋めてくるプルメリアに、ジェーンは笑みをこぼす。
隣でカレンも同じように笑っていた。
「じゃあ私は背中を流してもらおうかしら」
「ふふっ。カレンに甘えてもらえるのはとても珍しいですね」
「私も! 三人でお風呂入ろっ。毎日!」
ジェーンがうなずくと、プルメリアはようやく満足げな笑みを見せてくれた。
「てかジェーンちゃん、ディノにだけは話してたんスよね。あの人だけずっと訳知り顔だったスもん」
「それはちょっと寂しかったよな……」
ルークの不満にうなずいて、ダグラスは眉を下げる。ジェーンはハッとした。
もしやディノだけ特別扱いしたと思われてる!?
困った時、まっ先に頼りにしたいのは彼じゃない。そばにいて、見守っていて欲しいのはアメジストの瞳だ。
「あ、あのっ、ディノにはなぜか見破られてしまっただけでして……! 私から話したわけではないんです。それでディノからロン園長に相談して頂けることになったので、みんなにはすぐに話す必要はないと思い……。その、私も言いづらくて……」
「そっか。俺たちも気づけなくてごめんな」
「お喋りはそこまでにして頂いてよろしいでしょうか。小皇女様、ロジャー様」
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