第1章 2話 少年と舞い上がる水

 風花は長い間、ひたすらきらきらを感じた。気がつくと日が傾いていた。


 ふいに風が吹いた。


 桜の花びらが一枚舞って、ふわっと川の中洲に落ちた。

 風花は花びらを追う。ふわっと川を飛び越え、中洲に着地した。


 落ちていた花びらに手を伸ばす。


「あれ」


 風花は髪を揺らして振りかえる。


 川下のアカシアの群生地に人影が見えた。

 土手から完全に死角になっていたから気がつかなかった。


 風花と同じ歳くらいの少年だ。


 川に足を浸して立っている。澄んだ瞳をきらきら輝かせ、水面を見つめていた。


 なんて、きれいなんだろう。


 風花はまっすぐに想った。


 枝に隠れてよく見えないが、彼は西洋の神話のような白い服を着ている。


 その周りはきらきら輝いていた。舞いあがる水が、彼を包むように踊っているのだ。


 まるで、護っているようだった。


 ふしぎなふしぎな風景だ。……そして、そばにいるだけで浄められる気がした。


 泉のような色をした澄んだ瞳。うれしげに水面を見つめる表情。


 流れる水のような淀みのない仕草。


 まぶしくてまぶしくて、目が離せなくなった。


 人じゃ、ない……?

 幻みたいにきれいで水に護られて、例えるなら精霊……?


 舞うような水がまぶしくて、風花は目を細める。


 きらきらは風花の夢だ。

 魅きよせられるように動けなくなった。

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