第1章 16話 霧の水輪

「……ねえ、夏澄。あなたの幻術で、霧の水輪すいりん見せてよ」


 唐突にスーフィアがいい、微笑む。

 夏澄はふしぎそうに彼女を見た。


「なんだか疲れたちゃったの。みんなで気持ちを落ち着けましょう。夏澄は今日ずっと霊力を使っているけど、いいわよね」


 ねだるような瞳でスーフィアは続ける。


 ありがとうと、夏澄は微笑む。祈るように手を胸の前で重ねて、瞳を閉じた。


 ずっと、霊力を使っている……?


 そういえばと、風花は出逢ったときの夏澄を想い出した。


 あのとき、夏澄は川に浸かっていた。


 夏澄はきらきら光る水蒸気に包まれていたけど、今考えると、彼自身もかすかに光を放っていた。


 夏澄の霊力とおなじ色の、水色の光だ。


 ……あのとき、夏澄くんは霊力を使ってなにをしていたんだろう。

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