第1章 17話 水の精霊の国の自然現象

 夏澄はしばらくの間、なにかを念じるようにしていた。

 やがて、まぶたを開く。


「あの、スーフィアさん。霧の水輪ってなんですか?」

「水の精霊の国の自然現象よ。霧が水の輪になって舞うの。無二の光景なのよ」


 ゆっくりと、辺りに霧が漂いはじめた。

 霧は這うように広がっていく。


 地面に近いほど霧は濃かった。一番濃いところの霧が集まって、水滴に変わっていく。

 それが輪のような形を作りはじめた。


 腕輪くらいの大きさの輪だ。輪になった水滴は霧からのぼって、くるくる回りながら宙を舞う。


 見たことがない風景に、風花は息を飲んだ。


「夏澄、日中がいいわ。これを見るならやっぱり日中よ」


「注文が多いなあ」

 夏澄は微笑む。


 それと同時に辺りがぱあっと明るくなった。

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