第6章 2話 いつもと違った夏澄

 公園に着いて、霊泉の前に立ったときだ。風花は、あれ、と思った。


 今までは結界の前に立てば、夏澄が名を呼んでくれた。

 弾んだ声で、風花を結界に招き入れてくれたのだ。


 だが、今朝は違った。


 夏澄の声は、いつまで経っても聞こえなかった。

 あのときから、嫌な予感がしていた。


「あの、なにが……」


 風花の声は震える。

 優月からは生気が感じられず、風が吹いたら消えてしまいそうだった。


「怪我とかじゃないから安心して。……優月の心は弱りきってるの。自分が春ヶ原を傷つけたことが耐えられないのね」

 風花の気持ちを読んだように、スーフィアが答えた。


「私たちもなんとかしたかったんだけど……」

 スーフィアが短くいう。


「結局、癒やすことができなかったわ」


 ……。

 ああ、やっぱりと、風花はうつむいた。

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