第6章 3話 朝になってみると

 夏澄たちの話では、昨日、太陽がすっかり落ちたころ、夏澄たちは藤原の御泉に帰ってきたそうだ。


 そのころになって、優月はやっと口を開いた。


 私は草花が弱るのが苦しかったんです。


 そんな気持ちは抑えていたつもりでした。私は駄目ですね。

 自分の心も制御できないなんて……。


 夏澄は優月を癒やす幻術をたくさん見せた。


 藤原の御泉も、優月のために癒やしの霧をたくさん送ってくれた。

 その日はもう休むことにした。


 だか朝になってみると、優月の霊力は弱り、消えかかっていた。


 夏澄たちが声をかけても、もう反応は返って来なかった。


「優月さんは本当に春ヶ原な大事だったんですね」


「ええ。だからもう起き上がれないのよね」


 優月さんは本当に優しい。


 だから、あの春ヶ原で幸せに暮らして欲しかったのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る